猫とモカチーノ

Open App
6/17/2024, 2:17:57 PM

以前の私は、将来のことを考えるのが嫌いだった。

自分は大した人間じゃなくて、それに反して世界はすごい人で溢れている。

そう気づいてからは、器用な人と食べな自分をよく比較するようになっていて

「あぁ、あの人たちは立派に大人になって就職して、いい人と結ばれて幸せな人生が待っているんだろうな」

なんて、這いあがろうともせずに嫉妬して。

将来のことどころか、明日のことすら考えたくない毎日だった。

そんな、どうしようもない私のことを好きだというもの好きな人もいて

「あなたが気づいていないだけで、あなたも十分素敵な人ですよ」

そんな、もったいない言葉をかけてくれた。

彼はよく私の良いところを見つけてくれた。
自分じゃ悪いところしか目につかなかったからそれが新鮮で、知らなかった自分をたくさん知った。

そうして少しずつ、彼と過ごす明日が楽しみになっていった。

この先、未来永劫変わらぬ愛を永遠を誓う日。

「これからあなたと歩む未来が楽しみで仕方がない」

涙ぐみながら、心底嬉しそうにそう告げた彼につられて涙が溢れた。

私も、あなたと歩む未来なら怖くないよ。


お題『未来』

6/17/2024, 3:18:13 AM

1年前のあの日、ちゃんと気持ちを伝えられていたら、今が変わっていたのだろうか。

「今までありがとう!またね!」

1年前、高校の卒業式。
勇気を振り絞って、ずっと好きだった女の子と一緒に写真を撮った。

卒業アルバムの最後のページにメッセージももらって、気持ちも伝えられてないのに浮かれて。

「またね」と言う言葉が、最後の言葉になるって、心のどこかでは分かっていたのに。
もうこれで疎遠になってしまうと分かっていたのに。

結局意気地無しな僕は、最後まで好きだと伝えられなかった。

1年経った今でも忘れられなくて、彼女が上げるインスタのストーリーを見てしまう。

ある日、彼女のストーリーに映る知らない男。
頭を強く殴られたような感覚。

お揃いのネックレスを着けて、彼女は今まで見たことのないような幸せそうな笑顔で。

1年前のあの日、素直に気持ちを伝えられていたら、僕もこの笑顔を隣で見れていたのだろうか。

どれだけ後悔しても戻れないあの日。


お題『1年前』

6/15/2024, 10:42:56 AM

本を読むのは苦手だった。

長い文章を読んでると眠くなっちゃうし。
漫画ならスマホで読んでるけど、絵がない本は私には難しい。

でも、最近気になる彼は逆みたいで。
教室でも電車でも、いつも分厚い本を読んでいてすごいなーって思ったんだ。

それに、本を読んでる時の表情がすごく真剣で楽しそうで。

私が知らないだけで、そんなに面白いものなのかと。
私も読んで見たら、ワンチャンお近づきになれるかも!?とか考えちゃって。

とりあえず学校の図書館に行ってみることにした。
彼もよく通っている図書館。

(本って色々あるんだなぁ、どれも難しそう。面白くて読みやすい感じの本があればいいんだけどな)

どこに何の本があるかもよく分かってないけど、とりあえず図書館をウロウロしてみた。

(……彼は、どんな本が好きなのかな。やっぱり分厚いやつがいいのかな)

そんなことをぼーっと考えていると

「田山さんも本読まれるんですか?」
「へっ!?」

小さな声で話しかけて来たのは、まさに今考えていた彼。

「あっ、驚かせちゃってすみません。図書館にいるの珍しいなと思って」
「う、ううん!全然平気!!なんか読んでみたくなっちゃったんだ」

いつも目で追うだけだった彼と話している。
静かな図書館だからか、ドキドキと鳴る心臓の音が五月蠅いほど頭に響いた。

「どんな本読むんですか?」

「それが、普段読まないから、何を読んだらいいのか分からなくって……。島崎くんは、いつも何読んでるの?」

「僕ですか?色々読みますけど、最近は近現代の文学なんかにハマってよく読んでます」

「きんげんだい……。何だか難しそう」

その本のことはよく分からないけど、きっと難しい本なのだろうなと思った。

「たしかに難しいのもありますが、読んでみると意外と面白いですよ。それに、漫画で読めるものもあるので、長い本が苦手ならそれもおすすめです」

「本当!?漫画なら私でも読めそう!」

「たしかこの図書館にも置いてあったはずなので、見に行きましょうか」

そうして、島崎くんにオススメされた中から一冊選んで借りることにした。

また明日と別れの挨拶をして、借りたばかりの本を胸に抱いて、ワクワクしながら帰った。

初めて自分から読みたいと思った本。
好きな人が選んでくれた特別な一冊。

島崎くんの言う通り、読んでみると結構面白いもので、その本は私の好きな本第1号になった。


お題『好きな本』

6/15/2024, 5:48:27 AM

明日はついに運動会当日!

それなのに、空模様はあいまいで、天気予報も雨になったり曇りになったり。

「せっかく練習したのに、延期になるなんて嫌だ!」

と、クラスの全員が口を揃えて言っていた。
みんなの心模様も曖昧みたい。

「みんなでてるてる坊主を作りましょう!」

という、担任の藤崎先生の提案で、帰りの会にみんなで作ったてるてる坊主。

ニコニコしてたり、白目をむいていたり、変顔をしていたり個性いっぱい。

下校時間になっても空模様は変わらず曖昧だったけれど、てるてる坊主を作っている間に、みんなの心模様は晴れになってたね。

「明日、きっと晴れますように」


お題『あいまいな空』

6/14/2024, 3:54:24 AM

去年の夏。
紫陽花が綺麗に咲く、とある梅雨の日のお話。

「よし!今日も探検だー!」

その頃の私は、夕食後の散歩にハマっていた。
小さい頃から住んでいる住み慣れた町だったけれど、いざのんびり歩いてみると、新たな発見が多くて楽しかった。

可愛い花が咲いていたり、昔は人が住んでいた家が廃れていたり、犬を散歩するお爺さんとすれ違ったり。

毎回ルートを変えて、どんどん足を伸ばしたりもして、小学生の時の町探検みたいでワクワクする。

当時は紫陽花が綺麗に咲いているからと、色んな家の紫陽花を見て歩いては、写真に収めていた。

「あっ、あそこにも咲いてる!」

紫陽花を辿って、辿って。どんどん辿って行く。

そんな旅の末に出会ったのが、可愛らしい子猫の家族。

「かっ、可愛い!!」

野良なのに人懐っこくて、小さな体でよちよち歩く子猫たちは天使のようで。

それからは散歩のルートが一通りになった。


紫陽花がくれた、夏の小さな思い出。



お題『あじさい』

Next