猫とモカチーノ

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本を読むのは苦手だった。

長い文章を読んでると眠くなっちゃうし。
漫画ならスマホで読んでるけど、絵がない本は私には難しい。

でも、最近気になる彼は逆みたいで。
教室でも電車でも、いつも分厚い本を読んでいてすごいなーって思ったんだ。

それに、本を読んでる時の表情がすごく真剣で楽しそうで。

私が知らないだけで、そんなに面白いものなのかと。
私も読んで見たら、ワンチャンお近づきになれるかも!?とか考えちゃって。

とりあえず学校の図書館に行ってみることにした。
彼もよく通っている図書館。

(本って色々あるんだなぁ、どれも難しそう。面白くて読みやすい感じの本があればいいんだけどな)

どこに何の本があるかもよく分かってないけど、とりあえず図書館をウロウロしてみた。

(……彼は、どんな本が好きなのかな。やっぱり分厚いやつがいいのかな)

そんなことをぼーっと考えていると

「田山さんも本読まれるんですか?」
「へっ!?」

小さな声で話しかけて来たのは、まさに今考えていた彼。

「あっ、驚かせちゃってすみません。図書館にいるの珍しいなと思って」
「う、ううん!全然平気!!なんか読んでみたくなっちゃったんだ」

いつも目で追うだけだった彼と話している。
静かな図書館だからか、ドキドキと鳴る心臓の音が五月蠅いほど頭に響いた。

「どんな本読むんですか?」

「それが、普段読まないから、何を読んだらいいのか分からなくって……。島崎くんは、いつも何読んでるの?」

「僕ですか?色々読みますけど、最近は近現代の文学なんかにハマってよく読んでます」

「きんげんだい……。何だか難しそう」

その本のことはよく分からないけど、きっと難しい本なのだろうなと思った。

「たしかに難しいのもありますが、読んでみると意外と面白いですよ。それに、漫画で読めるものもあるので、長い本が苦手ならそれもおすすめです」

「本当!?漫画なら私でも読めそう!」

「たしかこの図書館にも置いてあったはずなので、見に行きましょうか」

そうして、島崎くんにオススメされた中から一冊選んで借りることにした。

また明日と別れの挨拶をして、借りたばかりの本を胸に抱いて、ワクワクしながら帰った。

初めて自分から読みたいと思った本。
好きな人が選んでくれた特別な一冊。

島崎くんの言う通り、読んでみると結構面白いもので、その本は私の好きな本第1号になった。


お題『好きな本』

6/15/2024, 10:42:56 AM