「あれ、今日は君たちだけなのかな?」
「ニャー」
3ヶ月ほど前、近所を散歩してる際に出会った野良猫の家族。
黒猫のお父さんと、雉虎の三兄弟。
初めこそ警戒されていたものの、ほぼ毎日会っていたこともあって、最近は撫でさせてくれるくらいには仲良くなれていた。
今日も会えるかなと、いつも彼らがいる池の麓に来てみると、いつもいるはずの黒猫と末っ子猫の姿が見えない。
「お父さんと妹ちゃんはどこかに出かけているのかな?」
「ニャー」
長男猫と次男猫に構ってもらいながら、しばらく待ってみたけれど、結局その日は黒猫と末っ子猫には会えなかった。
会いに行ってもいないことは、これが初めてではなかった。
野良猫なのもあって、タイミングが合わないと会えない日もある。
今日はたまたまタイミングが悪かったんだ。
そう自分に強く言い聞かせたが、心の奥底に小さな不安が残った。
それから、何日経っても、季節が変わっても、黒猫と末っ子猫に会えることはなかった。
お題『突然の別れ』
「はじめまして、〇〇です。よろしくお願いします」
礼儀正しくて笑顔の素敵な人。それが〇〇さんの第一印象だった。
田舎の小さな喫茶店のアルバイト。
お金が稼げればなんでもいいと、ただ機械的に働いていただけだったのに。
「それ、持ちますよ」
「他に何かできることはありませんか?」
「すみません、ありがとうございます」
入ったばかりにも関わらず、自分にできることを精一杯やってくれたり、重たいものを持つのをかわってくれたり。
そんな優しい彼を好きになるには時間が掛からなかった。
〇〇さんはどんな女の子が好きなのだろう。
また一緒の日に入れるといいな。
今日はなんて話しかけようかな。
気づけば毎日彼のことばかり考えている。
続かなかったダイエットも、めんどくさかったスキンケアも、今はなんだか楽しかった。
「今日もよろしくお願いします」
そう言った彼はいつも通りの彼で、ドキドキしているのも会えて嬉しいのも自分だけなのだと思うと、少し胸が苦しくなる。
まぁ、その苦しさすらも心地よく感じてしまうのだけれど。
今日もたくさん話せるといいな。
お題『恋物語』