僕の両親は、僕が小さかった頃、
時々、喧嘩していた。
ガラスやコップが割れたり、頬を叩く音がした。
怖かった。
怒鳴り声も、父親の姿も。
なんで、そんなに怒るのか分からなかった。
貧しさも、きっと一つの大きな要因だったと、
今なら、よくわかる。
愛とか平和とか、身近な恐怖の記憶を辿ると
遠くに感じる。
僕は今、きっと愛と平和は守られているが、
いつ、壊れるかは、わからない。
ただ、一つだけ確かなことは、
両親の同じ姿にはならないようにできると思う。
僕にとって、きっとあの人は特別だった。
ほんの数回しか、会わなかったけど
あの人に会えると、うれしかった。
たった、1時間弱、ほんのひとときが
僕には、大切な時だった。
今は、もう、どこにいるかさえわからないけど
ずっと忘れられない人。
好きという言葉を交わすことなく、
抱きしめ合った。
過ぎ去った日々は、二度と戻らない。
今は、思い出の中で時々、淡い偽りを抱きしめてみる。
お金では買えないものが、
やっぱりお金より大事なもの。
お金に換えられないモノも。
僕は、そう思う。
身近な人、いつもそばにあるモノ、
今まで作り上げてきたモノ。
ちっぽけなモノも沢山あるけど、
すぐには捨てられない。無くせない。
失いたくない。
いつか、カタチがなくなってしまうかもしれないけど、
お金とは、違う。
僕は、お金持ちではないから、強く思う。
夜中、車であなたの元へ一人、走った。
僕は、ずっと、あなたのことばかり考えてた。
フロントガラスの端に、月が浮かんで、
僕と一緒に、ずっと付いてきた。
星はあまり目立たずに、月がぽっかり
あなたに、ただ、会いたくて。
月夜に、二人、やっと会えても、
望まない朝がやってきて、それぞれ、
僕らは、別れた。
十数年前に、初めて会ったあなたと、
今日も一緒にいた。
僕は、こんなに長く、一人の人と共に
過ごすなんて、思ってなかった。
正直、恋愛も結婚も、人にすすめられたまま。
自然に誰かを本気で、一緒にいつまでもいたいなんて、思う僕ではなかった。
でも、あなたと知り合って、子供も生まれて
家族が増えて、幸せってこうなんだ、って。
日中、家族の誰かのことをずっと考える。
僕のことも、考えてもらってる。
キズナって、そういうものかな?
わからないけど、確かにつながってる。