「はやくはやくー!」
「ま、待ってください……」
私達は家の近くにある草原を走っていた。
心地良い風を全身で感じながら私はサクラの大木がある場所まで行き、そこで止まった。
その後ろからは息を切らしながら私の幼馴染が追いついて来た。
「は、速いですよ………」
「えへへ♪ごめんごめん♪」
そう軽く返しながら、私はサクラの大木を見上げた。
「やっぱり今日が一番綺麗だよね。このサクラ」
「そうですね。俺もそう思います」
この日は毎年決まってこの木の下で1日中自由に過ごしていた。
サクラの花びらは今も少しずつ散り続けているが、やっぱりその姿も綺麗だ。
「………………」
舞い散るサクラの花びらの中で、隣りにいた幼馴染の彼がどこか、さみしげな表情をしていた気がした。
「大丈夫?」
「え?えっと………」
最初は驚いたようだったが、しばらく黙った後、小さく口を開き言った。
「また、来年も一緒に見たいなって……」
その言葉が、なんとなく『祈り』な様な気がした。子供が明日何をして遊ぶのかを決める様な言葉だが、本当にできるのかという不安が伝わってくる………気がした。
正直、どうしてそんな風になってるのかは分からなかった。でも………
「大丈夫!絶対、ぜーたい見れるよ!約束する!」
不安にさせたくなくて、そう言った。
「………ライト」
また少しさみしげな表情をしていたが、すぐに顔を軽く振った後、頷いてくれた。
「はい!また来年のこの日も………ライトの誕生日にも、一緒にこのサクラを見に来ましょう!」
「うん!」
ー君と一緒にー
ライト・オーサム
変わらないものはない。
人はどんどん大きくなったり、考え方が変わったりする。
花は綺麗に咲いて、枯れて、まだ咲く。
鉄はいつか錆るし、写真はいつか色褪せてゆく。
ーじゃあシーマは?
年齢はもう変わらない。
身長も伸びない。
いつまで経っても変われない。
………それでも
変われるって信じたい。
だから髪を切って見たりした。
だから魔法の研究をしてみたりした。
だから………旅を始めた。
シーマも変われるって信じて。
だって……
ー変わらないものはないー
シーマ・ガーベレル
『あ、あの………』
『んー?どうしたの?』
『えっと、なんだか不思議な臭いがして……お母様ま何を何をしているんですか?』
『これ?これはね、ゆずのジャムを作ってるのよ』
『ゆずのジャム?』
『そ。パンに塗って食べるの』
『そうなんですか。美味しいんですか?』
『ええ!とっても!』
ー
「リース?どうしたの?ぼーっとして」
「あ、すみません………」
「それで、この臭いってなんの臭いなの?」
シーマさんにゆずの香りについて聞かれて、つい昔のことを思い出してしまった。
最初は少し独特に感じるゆずの香りに驚いてしまったが、今ではすっかり平気になっていた。
「たぶん、あっちで売っているゆずの香りですね」
「へー」
私とは対照的にシーマは少し臭いに顔をしかめながらお店づくりに売っていたゆずを見た。
「あれっておいしいの?」
昔の私と似たような質問をシーマがしてきてしまうもだからつい顔が緩んでしまう。
「近くにゆずを使ったお菓子が売っているみたいなので、見に行って見ましょう」
ジャム以外のゆず料理は食べた事無いが……
「きっと、とっても美味しいですよ」
なんとなく、そう思った。
ーゆずの香りー
リース・リリィーナ
母に愛されず人に怯え続けている子に
別れを繰り返し疲れ果てた魔女に
人を信じることをやめた孤独な子に
周りから“力”としか見られなくなった剣士に
あなた
そして毎日を必死に生きている創作者に
たくさんたくさん愛を注いであげてください
もしちょっと嫌いになってしまっても
また愛せると思ったら
愛を注いであげてください
きっと愛がなくなることをすごく恐れているので
あなたの愛はあなたにしかあげられないから
独りはとても寂しいから
ー愛を注いでー
Melody
お母さんに殴られて痛い身体にも
いじめでズタズタにされた心にも
人目に怯えるようになったわたしにも
誰が観ているわけでもないのに
全てに蓋をして、平気なフリをし続けている
そんなの………………
ー助けてもらえなくて当然でしょ?
………………………………………………だから、
なんでもないフリなんてしないで。
ーなんでもないフリー
???・?????