『あ、あの………』
『んー?どうしたの?』
『えっと、なんだか不思議な臭いがして……お母様ま何を何をしているんですか?』
『これ?これはね、ゆずのジャムを作ってるのよ』
『ゆずのジャム?』
『そ。パンに塗って食べるの』
『そうなんですか。美味しいんですか?』
『ええ!とっても!』
ー
「リース?どうしたの?ぼーっとして」
「あ、すみません………」
「それで、この臭いってなんの臭いなの?」
シーマさんにゆずの香りについて聞かれて、つい昔のことを思い出してしまった。
最初は少し独特に感じるゆずの香りに驚いてしまったが、今ではすっかり平気になっていた。
「たぶん、あっちで売っているゆずの香りですね」
「へー」
私とは対照的にシーマは少し臭いに顔をしかめながらお店づくりに売っていたゆずを見た。
「あれっておいしいの?」
昔の私と似たような質問をシーマがしてきてしまうもだからつい顔が緩んでしまう。
「近くにゆずを使ったお菓子が売っているみたいなので、見に行って見ましょう」
ジャム以外のゆず料理は食べた事無いが……
「きっと、とっても美味しいですよ」
なんとなく、そう思った。
ーゆずの香りー
リース・リリィーナ
母に愛されず人に怯え続けている子に
別れを繰り返し疲れ果てた魔女に
人を信じることをやめた孤独な子に
周りから“力”としか見られなくなった剣士に
あなた
そして毎日を必死に生きている創作者に
たくさんたくさん愛を注いであげてください
もしちょっと嫌いになってしまっても
また愛せると思ったら
愛を注いであげてください
きっと愛がなくなることをすごく恐れているので
あなたの愛はあなたにしかあげられないから
独りはとても寂しいから
ー愛を注いでー
Melody
お母さんに殴られて痛い身体にも
いじめでズタズタにされた心にも
人目に怯えるようになったわたしにも
誰が観ているわけでもないのに
全てに蓋をして、平気なフリをし続けている
そんなの………………
ー助けてもらえなくて当然でしょ?
………………………………………………だから、
なんでもないフリなんてしないで。
ーなんでもないフリー
???・?????
仲間。
イメージとしては、互いに信頼できて、仲良くて、あと……頼りになる感じ!………でも、
「シーマ、あの………あ、いえ、なんでもないです」
「私はいいので、シーマ先にどうぞ」
「私なんか………」
リースは、なんか違う。
全然信頼してくれてる感じないし、壁があるし、頼りにしてくれないし………
………きっと、過去に何かあったんだろーなーとは思うけど、やっぱり仲良くなりたい。
「………よし。がんばろっ」
ー仲間ー
シーマ・ガーベレル
私は今、部屋のすみっこで宿に置いてあった本を読んでいる。
何故角に?いや、特に理由があるわけでは無い。
ただ、部屋の隅は何故かとても落ち着くのだ。
そんなことを頭の片隅で考えながら本を読んでいたら、部屋の扉が開き誰かが入ってきた。
顔を上げて見ると、そこには片目を前髪で隠している少女………ロコさんがいた。
「あ、ロコさん。おかえりなさい」
「ただいま。………あの2人はまだ戻ってきてないの?」
「はい。たぶんまだ宿の庭の池にいるんだと思います。」
「まったく、明日もあるのに………」
「そ、そうですね」
(2人は寝付くのがすごく早いから、意外と大丈夫な気もするけど………)
「ところで、なんで部屋の隅で本読んでるの?」
「え?えーっと………お、落ちていくから……ですかね?」
突然聞かれた私は何故か疑問形で返事をしてしまった。
「なんで疑問形なのよ………」
「す、すみません………」
ロコさんにも呆れられてしまった……
「………まあ、わからなくはないけど」
「え?」
そういうとロコさんは私の隣まで来て座った。
「部屋の隅って、何故か落ちつくのよ。慣れているからかしら」
「慣れ………」
そこまで言われて気がついた。部屋の隅は、私にとっての居場所の様な場所だったのだ。
母が怖くて、私はいつも部屋の片隅で縮こまっていた。
だからこんなにも落ち着くのだろうか?
「………ロコさんも本、読みますか?」
「そう……ね。ちょっととってくるわ」
「はい」
そう言うと露光さんは一階へ本を読んでいたらを取りに出ていった。
(ロコさんも、いつも部屋の隅に逃げてたのかな)
そう思うと、なんだかんだ更にロコさんに親近感が湧いてきた。
(もっと、ちゃんと話してみよう)
そう、人相手に思うことができた。
ー部屋の片隅ー
リース・リリィーナ