私は今、部屋のすみっこで宿に置いてあった本を読んでいる。
何故角に?いや、特に理由があるわけでは無い。
ただ、部屋の隅は何故かとても落ち着くのだ。
そんなことを頭の片隅で考えながら本を読んでいたら、部屋の扉が開き誰かが入ってきた。
顔を上げて見ると、そこには片目を前髪で隠している少女………ロコさんがいた。
「あ、ロコさん。おかえりなさい」
「ただいま。………あの2人はまだ戻ってきてないの?」
「はい。たぶんまだ宿の庭の池にいるんだと思います。」
「まったく、明日もあるのに………」
「そ、そうですね」
(2人は寝付くのがすごく早いから、意外と大丈夫な気もするけど………)
「ところで、なんで部屋の隅で本読んでるの?」
「え?えーっと………お、落ちていくから……ですかね?」
突然聞かれた私は何故か疑問形で返事をしてしまった。
「なんで疑問形なのよ………」
「す、すみません………」
ロコさんにも呆れられてしまった……
「………まあ、わからなくはないけど」
「え?」
そういうとロコさんは私の隣まで来て座った。
「部屋の隅って、何故か落ちつくのよ。慣れているからかしら」
「慣れ………」
そこまで言われて気がついた。部屋の隅は、私にとっての居場所の様な場所だったのだ。
母が怖くて、私はいつも部屋の片隅で縮こまっていた。
だからこんなにも落ち着くのだろうか?
「………ロコさんも本、読みますか?」
「そう……ね。ちょっととってくるわ」
「はい」
そう言うと露光さんは一階へ本を読んでいたらを取りに出ていった。
(ロコさんも、いつも部屋の隅に逃げてたのかな)
そう思うと、なんだかんだ更にロコさんに親近感が湧いてきた。
(もっと、ちゃんと話してみよう)
そう、人相手に思うことができた。
ー部屋の片隅ー
リース・リリィーナ
12/7/2023, 10:46:30 AM