「日々」
あなたの日々という本、
ぱらぱらと軽快なリズムを刻む
よっこいしょと1日1日が重く、
今日を終えるのが精いっぱい
スキップするように
心が動く日、動かない日
違った時の流れがある
気づけば終わってしまう物語のように
上の空で過ぎ去っていく
あなたの刻む日々はどんな物語を紡ぎますか
できることなら
そのページとページのあいだ
めくる手の隙間に憩い
ひとときの休息をあげたい
日々のあいだを吹き抜けていく風となって
#遠くの空へ
「卒業の成仏」
終わりも始まりも
告げられることなく
区切りなく
手から離された
風船のように
川の流れにたゆたう
浮草のように
ただふわふわと漂った。
立ち止まると
もうそこは
一面に花畑が広がる季節
チューリップが
庭を華やがせている。
生命の芽吹きの時期、
おっはよーう!と
もぞもぞ蠢く虫や新芽。
あんなにも揺り動かされた
感情や笑い泣いた時間
振り返る暇もないままに、
激動の今に流され、埋もれ、
大切な日々が
乾いた砂漠の
ひと粒の砂となって
消えてしまうのは
あまりに惜しい。
ひとつひとつが
大切な記憶のかけら
過ぎし日々の形が
いつか
ぼんやりとでも
浮かび上がってくるように
今はホロっと
こぼれた愛しき断片を集めよう。
#春爛漫
今日みた
冷たい雨
チューリップ
すり減った階段
パソコンの画面
クッキー缶から飛び出す鳥
目に映るすべてを
数え尽くすことなんて
できないが
目に映ったものが
みんな記憶となって
わたしを形づくる
泉になる
あなたの瞳にも
わたしの知らない記憶を
無数にもった泉が。
みつめれば みつめれば
その泉にたどり着けそうで
どこまでも泳ぐ
#君の瞳を見つめると
「あいだで」
ぼこりと空いた穴の上にすわる
ふかく深くに おっこちたみたい
ざらざらと冷たい砂が
ちくちくと肌を刺す
たったひとりだったんだね
いつでも人は
当たり前すぎる事実が
地の果てまで広がっていた
大きく伸びをして
寝転がった額のさき
白い粒がまあるく光る
星をあんなにも
尖らせたのは誰だ
包むような星は
わたしを決してひとりにはしない
ひとりぼっちで賑やか
月の上 星空の下
もっとも孤独でうつくしい
世界のあいだで
#星空の下で
いつからか4月1日がニガテです
いつからか桜がニガテです
いつからか春がニガテです
春の香りがするすべて
そのあたたかさとは裏腹に
怖さと共にやってくる
怖がるように
ためらうように
舞い散る桜の花びら
わたしにはまだ
1人で舞う準備はできていない
#それでいい