それはなにげない朝
窓からみえる青々とした緑
頬にあたる陽の光
読まれるのを待つ積読本
いつものチーズトースト
おはようと言う相手のいる朝
ぼんやりした脳内に
まぼろしのなような朝が流れる
いまには今の日常があり
今にはいまのしあわせがある
あらゆることを経験し尽くしたような
気もするし
全くなにも知らないような気もする
楽しく生ききるには長すぎて
生きるために生きる日々を思ってこわい。
#平穏な日常
「また弱音ばっかりはいちゃうけどだいじょうぶ?」
「そのために俺がいるんでしょ?」
どうしてもっと早く
あなたのよさに気づかなかったのだろう
そのやさしさ ぬくもり 頼りがい
ぬくぬくと育っていく木のように
打出の小槌から溢れる小判のように
隣にいれば
しあわせが増えていく
喜びが何倍にもなる
そんな予感にふるえる
かけがえのないものでしょう?
#お金より大事なもの
「ふつうのゆめ」
わたしの夢は
自分にしかできないことをする
ことだった
どんな職業の名前も
どんな肩書きも
みんな自分じゃなくてもいいこと
と思って手放した
なにも選ばなかった私
可能性だと思っていたことは
あまりにつかみどころがなく
不可能だと思うことがふえた
自分にしかできないことなんてひとつもない
すん、と希望のとびらがひとつずつ
ゆっくりと閉じていく音がした
だけれど同時に開かれたもの
すべてが自分にしかできないことなんだろう
ということ
いまここに存在して
目の前の人に少なからず影響を与え
過去があって今があって未来があるということ
誰よりもふつうでいい
私であることは誰にもできない
#誰よりも
「2/14 おくった詩」
あなたを想って浮かぶのは
たとえば
きいろいバラ
考えるときする変なポーズ
あきれたようにふる首
つくつくした髪
健やか刻む心臓
赤いバラや
くっきりしたふたえや
ひっくり返るようなときめき
ではないけれど
隣に居てほしいとねがう
あったかい思いだと思う
#バレンタイン
「燕」
さまざまな人が
来ては去り
来ては去って
唯一
そこに残り続けるもの
その強さ 寂しさ 揺らがなさ
カンカンカンと
鳴り響く金槌は
空間を揺らし
時を限りなく純なものに鍛える
次にあの音をきく時
職人たちはもういないかもしれない
花びらのようにクシャリとした手のしわ
見えない糸で結ばれたように澄んだ動き
きっと誰のこともあたたかく迎える眼差し
待っててくださいね
#待ってて