#誰もがみんな
「ひやり」
人がすき
人がきらい
家族がすき
家族がきらい
丸々と太った相反する
ふたつの思いをぶら下げて
ひっくり返りそうになる
人を喜ばせる言葉より多く
人を傷つける言葉を
もっているのではないか
ヒヤッとする
自分のしいんと冷たい部分を
見つけてしまったようで
誰にでもいい顔をして
誰のことも信じていないかもしれない
それもまたほんとう
#どこにも書けないこと
「無情」
写真の中の笑顔に会う
つるりとした肌と
なにもしらない瞳
不恰好な眉毛と
か細い足で
おさまっていた
ちくたくちくたく
止まらないで進む針
とくとくとくとく
止まらないで刻んだ心臓
完全に止まってしまうことのできない運命のもと
生まれてきたわたしたち
蹴り飛ばされるように
急き立てられるように
死に向かって全力で走る
無常なものの無情さよ
わたしはあなたが嫌いです
#時計の針
「昇華しようか」
花粉症は自分の持っている花粉の許容量を超えると
発症するという
好きなものでもあんまりに食べすぎると
嫌いになるという
ガマンはしすぎるとこころのコップが
溢れかえって洪水になる
どうにもならない思いを抱えたとき
一刻も早く消化したいと思う気持ちが生まれる
跡形もなく消え去れと
同時に芽生える思いもある
この思いよ留まれ
いつの日か言葉となって歌となって形となって
昇華される日の蓄えとなるべく
自分の肉体をこころを使って得たことだ
せっかくなら天高く昇華させたい
#溢れる気持ち
「アメリキス」
右目左目鼻唇
じゅんばんに
ていねいに
口づけをして
くしゃみをしてしまうほど
穏やかで
ひゃっくりしてしまうほど
素朴なもの
仏映画の中にでてきた
恋のかたちに憧れた
へんてこりんさを
そのまま愛して
身体中を口づけで埋め尽くして
#kiss
「ひとひとと」
1年で赤子はまだ土踏まずのない柔らかな足を大地に根ざし
10年で出会い別れ、すすむ道を照らし
100年で1人の人間の命は燃え尽きる
1000年でどれほどのものが生まれ死に、変わりゆくだろう
ぱらぱらとめくれていく日々の重なりと
ふっくらとずんぐりと厚みを増していく月日の重み
ひとひとひとひと
ひ と ひと と
歴史はそうやってつくられる
?
#1000年先