「これからそういうことは絶対にやらないで!」
一度、親友に本気で怒られたことがある。いつも二人でにこにこ笑っていたから、びっくりした。
バスの回数券を買うお金が足りないとぼやいていた親友に、千円分の回数券を渡したのだ。私の通学手段は普段バスだけど、親の送迎に切り替えることも可能だし、最悪30分ぐらい歩けば帰れる。だから後日千円分返してきた親友にそう言って「大丈夫だから気にしないで」と言ったら、怒られた。
「君が私を思ってやってくれるのは嬉しいけど、その分君が大変な思いをしたら、私は全然嬉しくないよ。それに、君がそうしたいって思う分私も君にそうしたいって思うからね!」
親友が、ちょっぴりたくましく見えた。
何も知らなかったの。
貴方が死んでしまったことも、死んでもいいと思えるぐらい覚悟していたことも。
鳥籠の中でずっと考えていたの。私は、貴方に何かしてあげられなかったかしら。未来を変えられなかったのかしら。
でも無理ね。だって私は鳥籠の中だもの。
そうやって諦めるのは慣れていたのに、どうしても涙が止まらなかったの。
心にぽっかり、穴が開いちゃった。
願う。
大切な人が、遠い場所で穏やかに過ごしていることを。
小鳥が舞い、風が踊り、空が輝き、豊かに花咲く所で、幸せに暮らしていることを。
祈る。
大事な人が、前を向いて一歩一歩進んでいけることを。
どれほど辛く苦しい道でも、生きて生きて生き延びて、幸せを掴んでくれることを。
どうか、穏やかに。
どうか、生きて。
どうか、幸せに。
名前を呼んで。私の名前を呼んで。
あなたの声とトーンで呼ばれたら、胸が掴まれるの。苦しいの。でも、泣きたいくらい嬉しいの。
私があなたの名前を呼べない代わりに、たくさんたくさん私の名前を呼んでほしいの。私、その度にたくさんたくさんあなたに笑いかけるから。
そしていつか終わりが来たら、あなたの名前を呼んでみてもいいですか?
私の視線の、真ん中に人を映しても、目から涙が溢れてしまうの。だから辛くて辛くてたまらないの。
でも、私を視線の真ん中に映してくれる人は現れないの。だから寂しくて寂しくてたまらないの。
私は決めたの。もう人を私の視線の真ん中に映すのはやめようと。
もし、映したくなった人ができたら…せめて端っこに、そっと映すわ。