これまでずっと、暗い道を辿ってきたの。
これまでずっと、憎しみを閉じ込めてきたの。
これまでずっと、一廉の人間になんてなれないと思っていたの。
そんな私達が、立ち上がろうと思えたのは、これまでずっと、誰かの優しさや愛に包まれて、守られていたのだと気づいたからなの。
スマホでお気に入りのサイトを見ても落ち着かなくて、小さくため息をつく。ちらりと見た黒板には、『令和○年度✕✕大学一般入試』と書かれた紙が貼られていた。
この嫌な緊張感を味わうのは二度目。前回は頑張れるところまで頑張ったが、だめだった。
ふと、一件のLINEがきていることに気づく。
《結紬。遂に本番だね。結紬は本当にすごいです。うちらは推薦で早めに終わらせたけど、うちらのいつめんグループの中で、結紬だけ最後まで努力してたよね。春休みみんなで卒業旅行に行った時、結紬だけちょっと苦しそうだったよね。ごめん。でもね結紬、あなたは私らの誇りだよ。誰よりもかっこいい人だよ。その結紬らしい真っ直ぐな気持ちを思いっきりぶつけてこい!
大丈夫。うちらはずっと結紬と繋がってるよ。大丈夫。》
時々送られてくる大学生活の報告に、嫉妬がなかったわけではない。心がちりちりしていたのを必死に隠していたけど、ばれていたのか。
深呼吸をして、一緒に送られてきたみんなで写っている写真を見た後、スマホの電源を落とした。
夢の中で、私は貴方と踊っていました。
嬉しくて楽しくて、ちょっぴり恥ずかしくて。でも幸せでした。心が温かくなりました。
その後貴方と踊る時間が終わって、私は遠くから、貴方が私について話しているのを見ていました。ああ、貴方とは幸せになれないのだなと、悟りました。
見下ろすと、さっきまで着ていたキラキラの衣装ではなく、くたびれた可愛げのない服でした。夢は夢なのだと、胸が締め付けられました。
そこで目が覚めて、何だか夢の中の自分は、魔法の解けてしまったシンデレラみたいと思いました。
自分がシンデレラだなんておこがましいですから、すぐにその思いは消去しました。
私自身が、ちゃんと選択をすること。ちゃんと考えること。ちゃんと意見を持つこと。
そうしないと、私が生きている意味がないから、ね。
オレンジ色に光る居酒屋のランプ。
車の眩しいライト。
コンビニのネオン。
街には喧騒とぴかぴかが溶け合っていて、何だかふわふわくすぐったい気分になる。
あ、違った。ふわふわしてたのは、アルミ缶のお酒を呑んでたからだった。大丈夫かなあ、私。
帰りたいな。このままふらふら歩いていって、静かなどこかに帰りたいなあ。故郷でも何でもないのに、何でそんなこと思うんだろ。寂しくて寂しくて、涙が出てきた。
だいじょーぶかなあ、私。