息が浅くなる。
胸が、苦しくなる。
心が、ぐらぐらと揺れる。
『最悪』
ぽつりと頭の中に浮かんだ2文字。
でも今の私にはどうにもできないから。吐息と共に、暗い気持ちをふうっと吐き出す。
一回だけでは足りないこともあるからしばらくそれを繰り返して。
そうして心を落ち着ける。
私の目の前で、貴方はこの世界を変えていこうとしています。それが嬉しい。貴方はきっとこの地獄を変えてくれると信じていました。そしていつか、貴方の行動力と誠実さが評価されてほしいと思っていました。
だから私は、たくさんの人を苦しめたのです。時には、殺めてしまうこともありました。
そんなことをしても自分の為にはならぬと貴方は仰るでしょう。では、誰がこの矛盾を孕んだ世界を変えることができるのでしょう。
いいえ。これは、貴方が知らなくて良いこと。私が墓場まで持って行こうと決意した秘密です。
なのに、何故、貴方は分かってしまったのでしょう。そして、何故怒らずに、そのような悲しいお顔をなさるのでしょう。
私は、貴方が本当に大好きですのに。
これも、誰にも知られたくない秘密です。
きつく閉じられたカーテン。
ほんの少し黒ずんだカーペット。
机に積まれた読みかけの本。
部屋の半分近くを占領する、人をダメにするクッション。
狭い部屋。けれどもそこは、私だけの領域。
酸いも甘いも、全てここで吐き出して。
そうしてできあがった空間。
何人たりとも、これを変えることはできない。
ねえ見て、窓から見える朝焼けが本当に綺麗。空が燃えてるみたいね。
もし、貴方と私が健全な関係だったら、それか"恋人"という関係だったら、私は心の底からの笑顔でそう言うと思う。でも貴方は向こうを向いて寝ているから、浮かんだ言葉は、胸の中で苦さを残して溶けていった。
布団から出ている腕と肩が、心なしか寒い。
いつから、貴方をこんなふうに思うようになったんだろう。知ってるのよ、貴方には、可愛くて守ってあげたくなるような相手がいるんだって。絶対に貴方には堕ちないって、私自信があったのよ。
なのに、どうして?慰めてもらうだけのつもりだったのに、いつの間にか身体の関係になって、いつの間にか苦しくなってしまった。
こうして身体を重ねた早朝に、そっと涙を零しても貴方は気づいてくれない。ああ、私ってそれだけの存在なのねって実感する。
もうやめたいわ。でもできなくて、だから結局私は泣くばかりなのね。こうなるならもっと、ちゃんとした失恋が良かったわ。
なんて、貴方を引っかけた私が言うことじゃあないわね。
生きることは、みんな苦しいことだけれど。
ちゃんとしなきゃいけないのは、分かっているけれど。
ただ、幸せな気持ちでいたいだけなのです。
この世は苦しいだけじゃないと、日々信じていたいだけなのです。
だから、時々弱くなってしまうのを、許してください。
これが私に伝えたい私の正直な気持ちです。