ここは教室。一人一人、テストの解答を受け取りに教卓の方に行っている。
反応は人それぞれ。
無表情のまま来る子もいるし、落ち込んでる子もいるし、喜んでる子もいる。
「次」
あ、私の番だ。
椅子を引いて立つ。
左側の通路にでて、教卓まで行く。
一つまでの席の男の子が戻ってきていた。
すれ違うときに。
「__________ふふっ」
どこからか、笑い声が聞こえた。
「うわっ!」
私の前に、さっき言った男の子の顔面があった。
どうやら、笑った子が男の子を転ばせたらしい。
よくある、通路に足を出すやつだ。
その勢いのまま、私の顔に男の子の顔が直撃する。
そのまま後ろに倒れる。
頭に衝撃はほとんどなかった。
男の子が頭を支えてくれたらしい。
最終的に、男の子が私を床ドンする形になった。
教室はシーンとしている。
男の子が我に帰ったのか、いきなり私の前から退いた。
「大丈夫...?」
「あ、うん、大丈夫。頭打ってないし。」
「...そ」
そっけない態度を取られた。
もしかしたら照れ隠しかもしれない。
男の子は自分の席に戻った。
周りからの視線が私の顔に刺さる。
いつまでもこうしてたらいけない。
立って、自分の席に戻った。
先生は何も言わずに、また「次」とテストの解答を返し始めた。
さっきの出来事を振り返ってみる。
笑い声。
からの、男の子の顔面直撃。
そのまま後ろに倒れる。
床ドン。
男の子はどいて、そのまま私も席に戻る。
うーん。
んー?
ん....!?
顔面直撃...!?
あ...あ...........!
キ、キス.........!!!
しちゃったよ..........!!
30xx年
「ねえねえ、知ってる?ずっと前の、機械時代!」
「うん、知ってるよ」
「あのねあのね、機械時代ってね、今とは違って、「電気」っていうもので色々動いてたんだって!」
「でんき?」
「今って、私たち魔力を使った魔道具でいろいろ動いてるでしょ?照明とか、洗濯とか、移動のワープとか、通話機とか、映像模写とか。だけど、機械時代は魔力がなかった、いや、なかったわけじゃないんだけど、見つかってなかった、っていう言い方がいいのかな。だから、電気っていうまた別の動力を使って色々動かしてたんだって。」
「へー」
「えーなんか興味なさそうなんですけどー」
「いや、まあまあ興味あるよ、機械時代のこと」
「あー、そうなんだ?」
「うん。調べたことあるし」
「なのに電気は知らなかったんだ?」
「...別のこと知ってるし」
「何知ってるの?」
「えっとね...機械時代の人たちは、みんな勉強してたんだって。今って生まれてすぐに基礎知識のメモリを脳の中に流すんだけど、機械時代の人たちはそういうのがなかったから、自力で知識をつけていってたらしいよ」
「へぇ、すごいね!機械時代の人!知識を自力でつけるって、どうやるんだろう」
「問題解いたり、大人に教えてもらったりして知識をつけていったらしい。しかも、子供はほとんど知識をつけるために学校に行ってたらしい。魔力の使い方を教える学校じゃなくて、知識を教える学校ね」
「へぇ、大変そうだねー。今は子供のときは魔力を伸ばしたり、魔力の使い方、魔法を覚えたりするけどね。魔力の使い方はメモリに入ってるけど、感覚はメモリにないから、1人1人教えなきゃ使えないからね」
「あと、機械時代の人たちってすごいんだよ。体の構造とか、地球の仕組みとか、宇宙の仕組みとか、歴史とか、そういうのが研究されて今に生かされているところもあるからね。お薬とかも機械時代の人たちが研究したらしいよ」
「機械時代の人たち、めちゃめちゃすごいじゃん!」
「そうなんだよね。僕たちが使っている文字は、機械時代より前の人たちが作ったけれど、安定させたのは機械時代の人たちなんだよね。だから、各家に【1000年後の孫たちへ】の手紙があるでしょう?その字が今も使われているんだから、すごいよね。しかもその内容も。今の私たちじゃあ思いつかないような技術が書いてあるんだよね。」
[生徒の皆さん、魔力の使い方の講座がまもなく始まります。自分が受ける講座の教室へ移動してください。なお、生徒の皆さんが一斉に移動するため、胸元にあるワーク石の処理スピードが遅くなる可能性がありますので、十分お気をつけてください。]
「...長いよね。聞き飽きたのことアナウンス!」
「わかる。けどテンパらないよりはいいよね」
「まあそうだけどさ」
「じゃ、行くか」
「うん!」
1000年先も
ブランコを漕いでいる時の感覚は忘れられない。
もう漕ぐことはないが、あの感覚は鮮明に覚えている。
頂点に達したときの浮く感覚。
勢いよく前後移動するときの風。
この2つが、ずっと僕の中にある。
無意識に足に勢いをつけて、どんどん景色が高くなっていくときの恐怖。
前に飛ばされるのではないかという恐怖。
これらもずっと、僕の中にある。
あの感覚を、もう一度味わいたい。
公園にあるようなブランコでは、もう僕の体は大きくなっている。
どこかに大きなブランコはないものか。
ないとは言わせない。
覚えていても、いくら鮮明に覚えていても、実際にやるのとでは天と地の差くらいに違うものだ。
もう一度漕ぎたい。
あの感覚を、もう一度。
ブランコ
旅が好きな人のことを、僕は理解ができない。
旅を続けていると、最後に何が残るのだろうか。
友達。
経験。
体力。
知識。
これらが残っても、僕には必要がない気がするのだ。
友達なら少なくてもいい。
経験だって、旅の経験なんてどこで役立つのだろう。
体力はジムに通ったり川沿いを走ったりすればいい。
知識はネットで調べたり本を読んだりしてつければいい。
僕は、旅は時間を奪うものだと思う。
だから、僕は旅が好きな人のことを理解ができない。
けれど、旅をしている人に
「なぜ旅をしているのか」
と聞くと
「好きだから」
と言われる。
この「好き」という理由だけで旅を続けているのだ。
悪く言えば、ただの自己満足。
自己満足したいから旅をする。
やっぱり僕には理解ができない。
旅路の果てに