故郷の友からの手紙を開くと、するりと何かが滑り落ちた。慌てて拾うと、それは栞だった。押し花で出来た栞だ。薄紅色の花が3つほど平面になってラミネートされている。
『こちらは春で桜が咲いています』
手紙にはそう書かれている。
桜。そうか、桜か。と、懐かしい気持ちが押し寄せてきた。
夢のために海外に居を移して1年。こちらの国では桜は咲かない。あっという間の1年だったけれど、故郷を恋しく思わせるには十分な時間だった。
夢のために、まだ帰ることはできない。叶えるまで帰らないって、自分に誓ったから。
『応援してるよ』
手紙の文字と、桜の栞。その2つに、背中を押された気持ちになって、胸が熱くなる。
まだまだ道程は果てしないけれど、挫けずに頑張ろう。そして、きっと夢を叶えてみせるんだ。
友から貰った、手紙と小さな贈り物に、改めて熱い決意の火が胸に灯った。
すれ違う瞳 後日書きます
君が遺した青い青い絵。一面青で塗られたこのキャンバスは、一体何を表現しているのだろう。
これは、均一な青ではなく、濃淡がつけてある。海の波だろうか。
濃い色は夜空に似ている。
薄い色は澄んだ青い瞳のようにも見える。
君は何を表現したかったのだろう。君はそれを遺さず逝ってしまった。僕には一生知り得ない答えだ。僕にはわからない。ただ目の前に青い青いキャンバスが広がっている。
僕にはわからない、だけれども、その青は冷たい青ではない気がした。優しく暖かい青な気がした。青に対してこんなふうに思うのはおかしいだろうか。それでも、僕には確かにそう思えるのだ。
優しい君が遺した青い青い絵。君のぬくもりの残る絵だ。
松田聖子さんの曲に「SWEET MEMORIES」という曲がある。「甘い記憶」というタイトルだけれど、甘いだけの歌詞じゃなくて、切なくてほろ苦い女心を歌っている歌詞だと思う。
砂糖の甘さを引き立てるのにしょっぱい塩をひとつまみ入れるように、甘い記憶も、痛みや悲しみ、切なさと一緒に思い出すほうが、その頃の甘さがより際立つのかもしれない。
風と 後日書きます