ミキミヤ

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4/10/2025, 7:24:42 AM

しばらく会っていない友人の顔が、ふいに頭を過ることがある。元気かな。会いたいな。そんなふうにフワって浮かぶんだけど、今忙しい時期かなとか、あっちはそんなに私に会いたくないかもなとか、いろいろなことを考えて、連絡しようか悩んでみたりする。結局、会いたい気持ちのほうが勝って連絡することが多いけどね。それで会えたらすごく嬉しい。
そんなだから、相手の方から『最近どう?』とか『会いたいな』とか連絡が来ると、ものすごーく嬉しい。私が犬だったら、ブンブン尻尾を振りまくってるんだろうなって感じ。誰かに気にかけてもらえて、会いたいって思ってもらえるのって、幸せだなって思うのよ。

4/9/2025, 9:15:47 AM

空から降る雨粒が、僕の身体をすり抜けて地面に落ちていく。パタパタと音をたてるそれは、僕の身体を濡らさない。僕は空に向かって手を翳してみた。僕の身体は何も遮らず、ただ鈍い色の空が見えるだけだった。近くには白くそびえ立つ病院が見える。その庭に生えた樹木は瑞々しく、空からの恵みの雨に喜んでいるようだったけれど、僕の心は今日の空のように暗く沈んでいた。僕が死んで3年。僕は君と約束したこの場所で、今も約束の成就を待っている。


君と僕は、同じ病気で同じ病院に入院していた。僕らの病気は生まれつきのもので、治療が難しく、手術をしないと治らないと言われていた。その手術はとても難しく成功率が低かったし、できる人も場所も限られていて、大半の子は受けることすらなく亡くなっていった。同じ病室の仲間は1人亡くなり、1人入院し、また1人亡くなり……と、少しずつ入れ替わって、日に日に近づいてくる死の気配に僕は怯えていた。
そんな僕を変えたのが君だった。君の放つ言の葉には明るい光が宿っていて、僕の心はそれに照らされて、少しずつ明るくなっていった。
君と過ごし、僕がよく笑うようになってからどれくらいのことだっただろうか。君に手術を受ける機会が巡ってきた。君は、成功率の低い手術だと知っていても、受けることを希望した。僕はそんな君を止めたかった。手術を失敗して僕の知らない場所で君が亡くなってしまうくらいなら、手術を受けず僕の近くで逝ってほしかった。エゴだって自分でも分かってたけど、君が僕の手の届かないところへ行ってしまうのがただ怖かった。
僕が何を言っても、君の意思は揺らがなかった。そして、君は言った。

「ここで必ずまた会えるよ。また2人で笑い合おうよ。約束だよ」

そうして君は手術のできる遠い病院へ旅立っていった。それからずっと僕は待ち続けた。また君と笑い合う日を夢見て、待ち続けて、そして、気づいたら死んでいた。君に会えないまま、僕は死んでしまった。
そして、この病院に魂を留めたまま、僕はまだ君を待っている。


ボーッと佇んでいたら、雨が止んだ。雲間から光が差した。僕の影を作らない光を、僕は眩しく見つめる。僕の心は晴れないままなのに、空模様は変わっていく。

「ねえ」

ふいに、後ろから声をかけられた気がした。死んでから長らく誰かに声をかけられた経験なんてなかったのに、僕は何となく振り返って――その人を見た。

「へへ、久しぶり。お待たせ」

待ち望んでいた光景がそこにはあった。僕の心に重くかかっていた雲が晴れた。
遠い日の約束は、今、果たされた。

4/8/2025, 8:01:37 AM

フラワー 後日書きます

4/7/2025, 7:53:00 AM

朝、いつもの最寄り駅までの道のりに、唐突にぽっかりと、更地になった土地が現れた。私は思わず立ち止まって、真新しく土が剥き出しになった地面を見つめる。え、この場所って、どんな建物が建ってたっけ、と。
毎日この道を歩いてきたのだ。何度もこの土地の前を通ったはずなのだ。それなのに、思い出せない。住宅だった気がするが、その記憶はハッキリとしない。どんな壁の色で、どんな屋根で、どんな玄関で、どんな庭で……全部靄がかかったように思い出せなかった。

帰り道、またあの更地の前を通る。やはり記憶はハッキリとしない。ふと思いついて、某地図検索のストリートビューで探してみた。
ここが駅であの道がここだから……と方向音痴なりに地図を見て、やっとそれらしい場所に画面の中で降り立ってみる。
その画面を見た途端、ジグソーパズルのピースが嵌るように、頭にかかった靄が晴れた。そこにあったのは、白い壁に赤い屋根が特徴的な、どこかメルヘンチックなところを感じさせる大きな家だった。大きな家だな、掃除が大変そうだな、なんて、過去に思った覚えがあった。何でこんな印象に残りやすそうな家の姿を忘れていたんだろう、と不思議になった。

ストリートビューを解除して、平面になった地図を眺める。この地図のこの場所に次に載るのはどんなものになるだろうか。もしかしたらしばらく更地のままかもしれない。それとも、土地がけっこう広いから、家が新しく何軒か建つかもしれない。
そんなふうに、この土地が変わって、新しい地図になる日のことを考えると、私は、少し寂しいような、それでいて楽しみなような、そんな気持ちになるのだった。

4/6/2025, 6:34:54 AM

「好きだよ」って君が言うたびに、私は戸惑うの。どうして私なんかって。君は「私なんか」じゃないって言うけど、私はなかなか納得できない。だって、ずっと、「お前なんか」って言われてきたんだよ。それを否定して守ってくれる人なんて、ずっと現れなかったんだ。君に出会うまでは。
私の中の卑屈な心は凝り固まってガチガチで、どんなに「好きだよ」って言ってもらってもなかなか解けそうもない。私がそう言うと、君は「いつまでだって、君が好きだって言い続けられるから、安心して」って笑うんだ。何それ。何でそんなに。わからないけど、私はなんだか涙が出て、君に惹かれてしまうの。君の言葉はまだ信じきれないけれど、君のそばは心地よくて。こんな私も、君に甘えて、そばにいてほしいって願ってもいいのかな。
私の気持ちが君の「好き」と一緒かはわからないけど、いつか誰かに「好きだよ」って告げるなら、その相手は君がいいなって、思ってるの。そう言ったら、君は笑ってくれるかな?

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