ミキミヤ

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2/7/2025, 9:49:44 AM

静かな夜明け 後日書きます

2/6/2025, 3:50:37 AM

前回書けなかったので2日分投稿です

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永遠の花束

貴女は美しく愛らしく聡明でユーモアがあって……いろいろな色を見せてくれる、花束のような女性だった。
亡くなってしまった貴女が灰色に朽ちてゆくのが耐えられなくて、私は魔法を使った。
“永遠の魔法”と呼ばれるその魔法は、貴女の美しさも愛らしさも聡明な瞳も楽しげに笑う口元もそのままに、永遠にこの世界に留めてくれる。貴方は永遠に色褪せない。
ベッドの中に永遠の貴女を横たえて、眠るその横顔を眺める。毎日毎日そうして過ごす。周囲の人間は私を異常だと言うけれど、私からしたら周りの方がおかしい。この花束のような女性がこうして目の前にいるのに、眺め愛でずにいられるなんて。
私は今日も貴女の横顔を眺める。貴女と過ごしたわずかな記憶も花びらのように貴女の姿を彩る。永遠の花束はここにある。ああ、ああ、私は幸せだ。

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heart to heart

弟と喧嘩した。理由は弟の進路のこと。中3になった、7歳年下の弟は、普通の高校ではなく専門学校に行きたいのだと言う。両親は「ショウタがきめたことなら」とあっさり専門学校の受験を許したようだけど、私は納得いかなかった。だって、ショウタは頭が良くて、どの教科も同じ歳の頃の私よりずっとできて、何にでもなれそうな可能性の塊みたいな存在なのに、その可能性を捨てて、今から1本の道に絞っちゃうなんて、ものすごくもったいないじゃない。だから、私は弟に言った。
「ショウタは視野が狭いのよ。もっと他のものにも目を向けなさいよ」
すると弟は、
「視野が狭いってなんだよ。てかなんでリコ姉に俺の進路に口出しされなきゃいけないわけ。俺が決めたんだから構うなよ」
と冷たく言われてしまった。
そこからしばらく冷戦状態。同じ食卓についていても会話はなく目も合わない、おはようもおやすみもない。
つらかった。つらい中、考えた。そして、私は結局、数多ある可能性を捨てて選んだ1つの道のその先で、壁にぶつかったり折れそうになったりした時に、ショウタが後悔するんじゃないかって心配で怖かったのだと気づいた。
私は決意した。それをもう一度ショウタに伝えてみようと。

勇気を出して、ショウタの部屋のドアをノックした。
「誰?」
「姉ちゃんだけど。入っていい?」
しばらく沈黙があって、ドアが開いた。弟は私を部屋に招き入れてくれた。
「何の用?」
問いかけてくる声は相変わらずどこか冷たい。
「あのさ、この前のことなんだけど。進路の。本当は私、あんたが一本道に進んだ先で後悔して傷つかないか心配で。だったらまだ1つを選ばないほうがいいんじゃないかって思ってあんな言い方になった。ごめん」
今度は考えに考えた心からの言葉を、まっすぐ目を見て伝えた。
「……俺も無視したりしてごめん。リコ姉に俺の考え方とか夢とか全部否定されたみたいな感じして嫌だった。」
ショウタはうつむきがちだった顔を上げて、私の目を見て言った。
「俺、これから行く道で折れたり傷ついたりしないって言い切れない。たぶん姉ちゃんにも父ちゃんにも母ちゃんにも心配かけるときはあると思う。それでも、やってみたいんだ。やらずに後悔するより、やって後悔したい。
俺、普通の高校に行ってもきっと楽しいんだとは思う。でも、やってみたかったなって気持ちを何処かで抱えたまま過ごすのは嫌だから」
「それだけ、やりたいことなのね」
「うん」
答えるショウタの目には決意が満ちていて。私の心配は消えないけれど、それでもこの子なら大丈夫だと、そう思った。
「あんたとこうして話せてよかった。姉ちゃんは、これからもあんたのこと心配はするけど、前みたいに余計なことは言わないから。でも、必要なときはちゃんと頼りなさいよ」
「うん。俺も話せてよかった。ありがと」

私はショウタの部屋を出た。
たった数分だったけれど、心と心で向き合って話せてよかった。
私は穏やかな気持ちで廊下を歩いた。

2/4/2025, 3:52:08 AM

屋上へ続く階段を上りきった先の扉の手前。猫柳リン先輩は、元々小さな身体を余計に小さく丸めて、体育座りをし、顔を膝に埋めていた。
我らが文芸部は部活時間はだいたい部室か図書室にいるものだが、この先輩に関してはそうとも限らない。いつも元気に自由気ままにどこかを飛び回っているような人だ。だから、こんなふうに薄暗い場所で蹲っている猫柳先輩を見るのは初めてで、動揺した。

「どうしたんすか、先輩。もう部活の時間始まってますよ」

俺が声をかけても、首をふるふると横に振るだけで顔は見せない。本当にどうしたんだろうか。クラスで何か嫌なことでもあったんだろうか。
とりあえず、先輩と同じ目線になるようにしゃがみ込んで、顔を覗き込んでみようとしてみたが、先輩の顔は両腕でしっかりガードされてて全然見えなかった。
表情も分からなければ、声も聞かせてくれない。どんな感情でいるのか、俺には全く分からなくて、途方に暮れた。

視界には、小さく丸まった先輩の小さくまぁるい頭だけ。途方に暮れ果てた俺は、その頭を柔く優しく撫でてみた。
先輩は一瞬ビクついて、俺の手を振り払った。
その時に腕の隙間から見えた表情は、悲しげに濡れていた。
俺の手を、振り払った先輩の片腕を捕まえて、先輩の顔を見つめる。すると、俯いていた先輩はやっと顔を上げて、俺を見た。

「あんまやさしくしないでよ……今やさしくされたらまた泣いちゃうじゃん」

震える声で、先輩は言った。困ったように下げられた眉の下の目は、ウルウルとこちらを見つめている。

困った。この人、可愛い。
いつもは俺を振り回してばかりの先輩なのだ。俺はそれにちょっと困ってるくらいの関係性なのだ。今日だって、部長に行方不明の猫柳を捕まえてこいって言われて、困ってたところだったのだ。
それなのに、こんな可愛いところを見せられると、余計、困る。

俺は衝動に任せて、猫柳先輩を自分の腕の中におさめた。先輩からは「うぇっ!?」なんておかしな声が聞こえたけれど、気にしない。そのまま、逃れようと身じろぐ先輩の背を撫でてなだめて、落ち着かせた。

「な、なんのつもりなんだい!?」

困惑した先輩の声が耳元で聞こえる。それを少しくすぐったいなと思いながら、俺は返した。

「こうしてると、悲しいこととか苦しいこととか、どうでもよくなりませんか?先輩のそういうのがどっか行くまで、付き合うっすよ。落ち着いたら、一緒に部室行ってください」

俺の言葉を聞いて、先輩が小さく息をのんだ。そして、俺の肩に頭を預け、背中にきゅっとしがみついてくる。

「確かにそうかも。あんがと」

その声は涙声だった。
俺はじっと、先輩を抱いて、自分の肩が彼女の涙で濡れていくのを感じていた。


明るく元気で自由気ままな先輩の、こんな一面を独り占めできるなんて、今日は役得だったなあと俺は思った。

2/3/2025, 9:13:28 AM

隠された手紙 後日書きます

2/2/2025, 3:57:18 AM

バイバイ 後日書きます

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