教会の鐘の音を聞くと、何故か浄化されるような気分になる。
という話を友人にしたら
「お前悪霊だったのか」
とエンガチョされた。
(お題:鐘の音)
待ち合わせ、友人のスマホの画面がちらっと見えた。
「お前さ、そのつまんないゲームまだやってんの?」
1年ほど前に一緒に始めたゲームだ。
初めの頃は斬新で面白いと思ったが、すぐにマンネリ化してしまい、俺は3ヶ月ほどでプレイを止めた。
「んー、なんとなくね」
「つまんないものを続けるのって、時間の無駄じゃね?」
「それはそうだけど、俺はまだ面白いと思う部分も残ってるから」
「例えば?」
「そうだな、最近は少しスキルが複雑化しているけど、しっかり分析すればよく考えられていると思うよ」
「それって、一見さんお断りの取っつきにくいスキルが増えたってことじゃねーの?」
「そうともいう」
「ははっ、やっぱそれ、つまんないよ」
すると友人は、珍しく真面目な顔でこういった。
「物事をすぐつまんないっていうやつは、そいつ自身がつまんない人間なんだよ」
(お題:つまらないことでも)
「いい? 私が起きてくるまでに、部屋を片付けておくのよ。それから、洗濯もしておいて。そうそう、ねこのケージの掃除も忘れずにね。もちろん、私の宿題もやっておくのよ。わかった?」
お嬢様はいつものように言い残して寝室に行かれました。
なにがゴミかもわからないほどに散らかったお部屋を片付け、整理整頓して整えました。
毎日整えているのに、翌日には阿鼻叫喚の地獄絵図になっているのは何故なのでしょうか。
積み上がったお洗濯も済ませました。今日はいいお天気だったので、きっとよく乾くでしょう。
お嬢様は試着で袖を通したものまでお洗濯に回されるので、いつも大量の洗濯物が出ます。こんなに洗濯をして、却って生地は傷まないのでしょうか。
お嬢様の愛猫たちのお部屋の掃除も致しました。吐いてしまった子がいるらしく、ケージが汚れていたので、水拭きし、アルコール消毒致しました。
猫たちは元気でしたので、体調に問題はなさそうです。
ついでに猫じゃらしで小一時間ほど遊んでおきました。
最難関の宿題もなんとかやっつけました。お嬢様はプライドが高く、提出する宿題に間違いがあることが許せないのです。故に私は、お嬢様の答え合わせ用の解答を、正確に作り上げなくてはなりません。お嬢様も学年が上がってきて、私も解答づくりが一筋縄ではいかなくなりました。2時間ほど費やし、なんとか作り上げました。
お嬢様、あなたに申し付けられたことは全て終わらせましたよ。
どうか、そろそろ、目を覚ましていただけないでしょうか。
お嬢様。
(お題:目が覚めるまでに)
お盆に帰省したら、娘が私の母を見つめてこう言った。
「どうしてばぁばの目は濁っているの?」
と、それこそ澄み切った瞳で、なんの邪気もなく。
母は白内障の手術を控えていた。
今は亡き祖母も白内障の手術をしたことがある。
あのときの祖母も、今の母も、確かに瞳がぼんやりと、黄掛かった白に濁っていた。
「人はね、年を取ると、だんだん目が濁っていってしまうんだよ。ひどくなるとね、手術とかして、治してもらわないといけないんだよ」
母は怒るでもなく娘に答えた。
私には癇癪持ちだったくせに、孫は可愛いのだろう。
目の中に入れても痛くないとはこのことか。
年を取ると人の目は物理的に濁る。
たしか中学だか高校で習った覚えがある。
そのせいで、年を取ると青系の色がくっきり見えなくなるのだとか。
そんなことを流れで習ったから、理科や保体ではなく美術の授業だったかもしれない。
私の目も、その頃に比べるとだいぶ濁ったに違いない。
それでも、長く生きた分、心の目はより養われ、澄んできたと信じたい。
無垢な娘の瞳と、老熟した母の瞳。
交互に見つめながら、そんなことを思った。
(お題:澄んだ瞳)
ツライム
スライムによく似た生き物
辛いことがあった人の前に現れ
ツライム音頭を踊って去っていく
「あーーー、テストで赤点取ったぁぁぁ!」
〜〜〜♪
ツライム音頭だよ〜〜〜♪
「な、なんだコイツら!?」
ハァ ツライムツライムツライムツライム……
(よいよい♪ よいよい♪)
ツライムたちはそのまま去っていった……
「な、なんだったんだ……?」
頭の中から、赤点のことは消えていた……
「ごめん、私、付き合っている人がいるの」
「そ、そんな……!」
〜〜〜♪
ツライム音頭だよ〜〜〜♪
「うわっ!?」「きゃっ!?」
ハァ ツライムツライムツライムツライム……
(よいよい♪ よいよい♪)
ツライムたちはそのまま去っていった……
「あ、うん、だから、そういうことで」「お、おう」
気まずかった空気はどこか滑稽なものになっていた……
「私なんて……死んだほうがいいんだ……」
〜〜〜♪
ツライム音頭だよ〜〜〜♪
「えっ? えっ? ここ、屋上……」
ハァ ツライムツライムツライムツライム……
(よいよい♪ よいよい♪)
ツライムたちはそのまま去っていった……
「なんか……馬鹿馬鹿しくなっちゃったな……」
「……帰ろ」
ツライムたちは、今日もどこかでツライム音頭を踊っている。
彼らにとっては、毎日が祭であった。
(お題:お祭り)