うに

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お盆に帰省したら、娘が私の母を見つめてこう言った。
「どうしてばぁばの目は濁っているの?」
と、それこそ澄み切った瞳で、なんの邪気もなく。

母は白内障の手術を控えていた。
今は亡き祖母も白内障の手術をしたことがある。
あのときの祖母も、今の母も、確かに瞳がぼんやりと、黄掛かった白に濁っていた。

「人はね、年を取ると、だんだん目が濁っていってしまうんだよ。ひどくなるとね、手術とかして、治してもらわないといけないんだよ」
母は怒るでもなく娘に答えた。
私には癇癪持ちだったくせに、孫は可愛いのだろう。
目の中に入れても痛くないとはこのことか。

年を取ると人の目は物理的に濁る。
たしか中学だか高校で習った覚えがある。
そのせいで、年を取ると青系の色がくっきり見えなくなるのだとか。
そんなことを流れで習ったから、理科や保体ではなく美術の授業だったかもしれない。

私の目も、その頃に比べるとだいぶ濁ったに違いない。
それでも、長く生きた分、心の目はより養われ、澄んできたと信じたい。

無垢な娘の瞳と、老熟した母の瞳。
交互に見つめながら、そんなことを思った。


(お題:澄んだ瞳)

7/30/2024, 11:13:45 PM