四片

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3/17/2024, 8:54:22 AM

〝怖がり〟

まだ日は落ちていないはずだが、墓地はかなり薄暗い。
全く、お盆の渋滞を舐めるんじゃなかった。
日が落ちる前に墓参りを終わらせよう。
…と、思っていたのだが子供の泣き声が聞こえてきた。
なんだか墓地の雰囲気まで変わったような気までする。
…でも、もし本当に子供が困っていたら、
見捨てる訳にもいかない。
とにかく、声のもとに近づいて見ることにした。
震えながら歩いていったにも関わらず、
そこにいたのは、普通の男の子だった。
どうやら、一人で来たものの、
暗くなり、怖くて帰れなくなってしまったらしい。
「ごめんなさいお兄ちゃん。僕1人で動けなくて…」
「ごめんな。俺、花買っててさ供えてからでいいか?」
「えっ。本当に?ありがとうお兄ちゃん!」
「…。よし!帰るか。またせてごめんな」
「ううん、こっちこそごめんね…騙してて」
「えっ?」
「じゃねお兄ちゃん!元気でね!大好きだよ今も昔も」
そしてぎゅっとハグをして、男の子は消えてしまった。
幽霊、だったのだろうか。
少し懐かしいような感じがしたが、もしかしたら、
亡くなった弟だったのだろうか。
元気で、やっていたらいいな。
「…全く、変わってないな、お兄ちゃん。
怖がりなところも、優しいところも。」
「良かったね、会えて。私も会いたかったわ」
「…きっと、奥さんを連れて、
おじいちゃんになって会いに来るよ」
そっと、遠くに見える姿に手を振った。

3/16/2024, 1:30:17 AM

〝星が溢れる〟

幼馴染の彼は、昔からすぐ泣くタイプだった。
泣きそうになるといつも私の所に来て、
泣きやむまで手を握りしめて離さなかった。
私はその間、じっと彼の涙を見ていた。
光で輝いて、星のように綺麗だった。
星が溢れるような、儚く美しい姿だった。

3/14/2024, 5:31:49 PM

〝安らかな瞳〟

ツンデレで、照れると当たりの強くなる君。
どうしようもなく好きで告白したけれど、
本当は嫌いなんじゃないかって、
不安に思うことも少しあったんだ。
でも一緒に過ごすうちに、
君の表情が柔らかくなっていって、
知らなかった君の一面を知って、愛は深くなった。
何もないただ過ぎていく時間を、君と共有できる。
隣には、安らかな瞳の、愛する君がいる。
こんな幸せなことって、他には思い浮かばない。
本当に、君に出会えて良かった。
これからも、まだ知らない君と出会いたい。

3/14/2024, 7:11:18 AM

〝ずっと隣で〟

隣の席のあの人は、いつも本を読んでいた。
何読んでるの?なんで聞くと、
いつも嬉しそうに答えてくれた。
席替えがあっても、いつも何故か隣で、
またお隣さんだねって、笑い合ってくれた。
いつしか恋に落ちて、
あの人の一挙手一投足に目を奪われていた。
ずっと隣で、一緒にいられると勘違いしていた。
いや、そう思い込もうとしていた。
関係が変わるのが怖くて、告白出来ないまま、
月日は流れていってしまった。
卒業のとき、あの人に告白した。
返事はいいって言ったけど、
なんでもっと早くに言ってくれなかったの、
なんで自分から言い出せなかったんだろうって、
好きだよって、そう言ってくれた。
社会人になった今も鮮やかに覚えている大事な思い出。

3/13/2024, 2:51:26 AM

〝もっと知りたい〟

「ギィーギィー」
私の自転車は、やけに金切り声を鳴らす。
少しうるさいくらいで支障はないが、やはりうるさい。
今日の予定を少し変えて、
先に解決策を調べた方が良さそうだ。
ブレーキをかけながら、いつもの駐輪場に入る。
自転車を止め、鍵を取ろうとするが、
なかなか取れない。
こちらもなんとかしなければ。
…にしても、今日は風が強い。
急いで、暖房の入った図書館に駆け込む。
入ってすぐのところにある検索機で、
チャチャっと打ち込めばすぐに情報が提供される。
めぼしいものを見つけたら、あとは探すだけ。
見つけた本を机の上に広げ、解決策を探す。
だが、他にも興味深い情報が溢れている。
もっと知りたい、もっと学びたい。
寄り道も、一つの醍醐味。

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