〝怖がり〟
まだ日は落ちていないはずだが、墓地はかなり薄暗い。
全く、お盆の渋滞を舐めるんじゃなかった。
日が落ちる前に墓参りを終わらせよう。
…と、思っていたのだが子供の泣き声が聞こえてきた。
なんだか墓地の雰囲気まで変わったような気までする。
…でも、もし本当に子供が困っていたら、
見捨てる訳にもいかない。
とにかく、声のもとに近づいて見ることにした。
震えながら歩いていったにも関わらず、
そこにいたのは、普通の男の子だった。
どうやら、一人で来たものの、
暗くなり、怖くて帰れなくなってしまったらしい。
「ごめんなさいお兄ちゃん。僕1人で動けなくて…」
「ごめんな。俺、花買っててさ供えてからでいいか?」
「えっ。本当に?ありがとうお兄ちゃん!」
「…。よし!帰るか。またせてごめんな」
「ううん、こっちこそごめんね…騙してて」
「えっ?」
「じゃねお兄ちゃん!元気でね!大好きだよ今も昔も」
そしてぎゅっとハグをして、男の子は消えてしまった。
幽霊、だったのだろうか。
少し懐かしいような感じがしたが、もしかしたら、
亡くなった弟だったのだろうか。
元気で、やっていたらいいな。
「…全く、変わってないな、お兄ちゃん。
怖がりなところも、優しいところも。」
「良かったね、会えて。私も会いたかったわ」
「…きっと、奥さんを連れて、
おじいちゃんになって会いに来るよ」
そっと、遠くに見える姿に手を振った。
3/17/2024, 8:54:22 AM