日常はつまらない。
君に会うのはつまらない。
そう思えるのは会えるということが日常であるときだけ。
失ってから気づくんだ。
君自身のつまらなさに。
そうやって僕は今日も失恋の苦しみを君に投射してる。
2【失恋】
君と初めての映画。
高揚感からついラブストーリーを選んでしまったが、失恋ものだった。
僕は過去を思い出した。
火薬の匂い、君を照らす花、影は二つ。
“愛してる”と詠む唇、頬伝う指、僕の涙。
失恋を知ったあの日に君との来世を願った。
映画を見る。
隣にはポップコーンを食べる君がいる。
今世はきっと幸せだ。
失恋なんてするものか。
2【正直】
あ。
君だ。
分かってしまったんだ、直感的に。
夏の匂いに溶け出す淡いシャンプーの匂い。
夏服の軽いスカートと走る海辺。
七月の青い海と花火大会のチラシ。
君だ。
僕は君に出会うために生まれ変わったんだ。
信じてもらえないかもしれないけど、君には伝えないといけない。
ただ、正直に。
君に、真っ直ぐに。
「また会えたね。」
あぁ。生まれ変わっても君は君だ。
また君が彼から花火大会に誘われる前に、僕が君のカレンダーに書かれたい。
「八月の花火、一緒に行かない?」
僕の正直な気持ち。
君の真っ直ぐな眼差し。
夏はまだ終わらない。
1【梅雨】
梅雨空はどうやら僕のことが嫌いらしい。
君に会いたいのに会うことができない。
いつか見た君の姿は夏の主役のようだった。
ならば梅雨は舞台袖だろうか。
夏の終わり、花火。
あれから10年たった今でも彼と花火を見るのか。
その前に一度、君に会いたい。
あともう一度だけ。
とはいえ、それでは舞台の悪役だ。
僕は君の人生になりたい。
今回ではどうやら駄目なようだ。
悪役のカーテンコールは今なのか。
梅雨空が明けた。
光が差し込む。
幕が上がる。
僕は上がる。
そして、
――――――生まれ変わる。
1【無垢】
君は白百合。無垢な白百合。
八月の入道雲にも、二月の雪化粧にも負けないほど儚くて美しい。
僕は到底近づけない。君は眩しい。
記憶の糸を解き辿ると、そこには君がいた。
七月の波打ち際の君。
八月の花火の下の君。
でも九月の君はいない。
君にはもう僕が見えない。
透明な僕に記憶は無い。
きっと今頃彼と―――――。
なんて考えてみてはまた一人。
無垢な君に触れる権利なんて端から無かったんだ。
白百合にとっては濁りすぎてる、オオバコの記憶を植えてしまったようだ。
でも残ってほしい。
君の足跡に僕はいたい。
君の来世で君の人生になりたい。