絶えて桜の

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5/31/2024, 9:35:44 AM

1【終わらない旅】

果てしなく続く海。
どこまでも高い雲。
コバルトブルーの絵の具をパレットに出した原色のような青空は僕の心を奪ってしまった。

七月の君は少し遠い。
波を追いかけて走って、濡れたローファーを砂浜に投げ捨てる。
そんな君をただ見ているだけ。

八月の君は茜色。
夏が終わる焦燥感が汗と混じり涙となって流れていく。
君はこの夏の最適解が分かったか?
僕は君を追いかけた。それが最適解だ。
君は、

きみは、

彼と過ごした夏が最適解か。


次の夏もまた君を追う。
旅は終わらない。

5/29/2024, 1:18:58 PM

1【ごめんね】

雨音が鳴り響く五月下旬。
僕は学生時代のある人を思い出す。
完璧主義で文武両道の彼はずっと僕の憧れだった。
たぶん妬んでもいた。それは自分でも分からない。
でも愛とか、恋とか、気づかないような彼だった。
シャボン玉みたいに流されるそんな彼だった。
僕はそれに優越感を抱いていた。
でも違うんだ。「そっか」と漏れた声、雨漏りの音。

彼にも愛する人はいるんだ。
勝てるわけない。彼と同じ好きな人なんて。

そう、あの時言われた一言は今でも胸に刻まれている。



『――――。』