1【無垢】
君は白百合。無垢な白百合。
八月の入道雲にも、二月の雪化粧にも負けないほど儚くて美しい。
僕は到底近づけない。君は眩しい。
記憶の糸を解き辿ると、そこには君がいた。
七月の波打ち際の君。
八月の花火の下の君。
でも九月の君はいない。
君にはもう僕が見えない。
透明な僕に記憶は無い。
きっと今頃彼と―――――。
なんて考えてみてはまた一人。
無垢な君に触れる権利なんて端から無かったんだ。
白百合にとっては濁りすぎてる、オオバコの記憶を植えてしまったようだ。
でも残ってほしい。
君の足跡に僕はいたい。
君の来世で君の人生になりたい。
5/31/2024, 1:10:04 PM