理想郷
「私の理想郷は〜、んー…そーだなあ〜!
お菓子がいっぱいある世界、とかっ!」
可愛いあの子はそう言う。その子の理想に男子は、
「××ちゃんって理想まで可愛いのかよ笑」
と発言する。やはり顔が良いだけでチヤホヤされるのだろうか?
あの子が言った発言を私が言ったらどうなるだろうか?きっと男子から
「太るぞ笑」 「考えることまでデブかよ。」
なんて言われるだろう。
だから私の理想郷は
"可愛いあの子のいない世界" だ。
あの子がいなければ私はこんなにも言われなくて済んだのだ。比べられなくて済んだのだ。
そして───虐められなくて済んだのだ。
あの子さえ、あの子さえいなければ。生まれてこなければ___
「来世はお前より可愛くなってやるから!!!!」
そう一言放ち、少女は屋上から飛び降りた。
まるで、一匹の美しい蝶のように。
───────フィクション───────
懐かしく思うこと
6、7年ほど前かな。
ばあちゃん家で大晦日の前だったから大掃除をしたとき。
私がピアノのコンセントを引っ張ろうとしたら火花が散って、指が真っ黒になって火傷したなあ…笑
私は泣きわめいて、ばあちゃんが水道まで連れて行ってくれて。指に水を当てて冷やしてくれて。
ばあちゃん
「大丈夫だよ」
って言ってくれたよね。
ああ、懐かしい。
ねえばあちゃん。なんで逝っちゃったの?
ばあちゃんは私と会う度に痩せこけていったよね。私が最後に聞いた言葉は、病院で面会をした日の
「ばいばい」
だったよ。
ねえ、どうして?長生きするって約束したでしょ?
私の誕生日は9月19日だよ。
ばあちゃんは9月20日に亡くなったね。
ありがとう。私の誕生日、祝ってくれたんだよね。私絶対ばあちゃんのこと忘れないからね。
行ける時はばあちゃんのお家とお墓に行って、線香立ててお供え物もちゃんと置いていくよ。
これがばあちゃんと私の
“約束”
だからね。
私が約束を破ったらバチを当ててくれる?笑
でもばあちゃんのことだからしない、っていうか、できないかなあ。
これが私の懐かしい思い出です。
紅茶の香り
私は紅茶の香りが苦手で、母が淹れている紅茶の香りでいつも目が覚める。
いつも「紅茶はやめて。」と言うけれど、やっぱり母は
「紅茶の味も香りも大好きでやめられない!」
って。そう発言した母が少し面白くて、笑ってしまった。
母と話をして私は
「行ってきます!」
と言い、学校へ向かった。
母は家のドアから私の登校姿を見て、キラキラとした笑顔で
「行ってらっしゃい!」
と言ってくれた。私まで笑顔になった。
今は亡き父も紅茶が大好きだったな、と思い出しながら電車に乗る。
学校へ着くと、友達が
「ハッピーバスデー!」
と言ってくれた。ああ、そうだ、今日は私の誕生日だ。
「覚えててくれたんだ。ありがとう」
そう言い席に着く。
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授業が終わり、放課後。友達とたわいもない話をしていると、電話があった。
私が小さい頃からよく通っている病院からだった。
「お母様が交通事故に遭いました。すぐに来てください。」
私はすぐに病院に向かった。
でも私が向かった時にはもう遅かった。私の誕生日ケーキを買いに行った帰り、大型トラックに轢かれて亡くなった、とお医者様から聞いた。
家に帰ってからは一晩中泣いた。そして一睡も出来ないまま朝を迎えた。
母が朝、いつも淹れていた紅茶を飲んでみる。
やっぱり、私の口には紅茶は合わない。
けれどこの日から私は──────
紅茶の香りが大好きになった。
───────フィクション───────