ビジュアルノベルゲームには、
『トゥルーエンド』というものがある。
それは作品によって
『グランドエンド』などと呼ばれることもあり、
言い方は違えど、要は『真実のエンディング』だ。
何周もして、何人ものエンディングを迎えたあとの
『トゥルーエンド』。
物語は「はじめから」でも、
重ねた「つづきから」の総体が『トゥルーエンド』となるわけで。
最終的、一番最後に結ばれるのは一人なのだけれど、
それならば、それまでの愛は「ニセモノ」になってしまうのか?
あの子と行ったデートで食べたクレープ。
あの子にした公園での告白。
あの子とキスをした神社での夏祭り。
すべて、別時間軸の同じ「俺」が体験した
別の女の子たちとの出来事だ。
「俺」は皆をそれぞれきちんと愛していた。
これが同一時間軸ならば浮気となるのではないか?
最後の一人の為だけに口からでまかせの「愛」を囁くのか?
『真実の愛』とは、一体なんなのか?
/7/24『True Love』
あなたと手を繋ぎたかった
キスをしてみたかった
許されるのなら その先も
叶わぬ夢は夢のままで
私はあなたの友人でいられるだけでいい
今世での役割は友達のまま
またいつか 来世こそ
あなたの隣で
恋人として笑っていたい
/7/23『またいつか』
夜空に向かって虫取り網を振ってみても
何も得ることが出来ない
あんなに「自分を見てほしい」と輝いているのに
星は捕まえさせてくれない
ぼくのものにはなってくれない
/7/22『星を追いかけて』
「野に咲く花のように」
なんて綺麗事は言えない
そんな強靭な肉体も精神も持ってないし
けれど何とか生きていかなくちゃいけないから
花じゃない
雑草でもないかもしれないけれど
必死に今を生きる
/7/21『今を生きる』
バンジージャンプだって
命綱があるから飛べるでしょ?
死ななきゃやすい
勇気を出して、飛べ
/7/20『飛べ』 (自戒を込めて)
「なんでもない日バンザイ☆」
昔とある映画で聞いた
今日は誰かの誕生日であり
誰の誕生日でもない
君にとってどうでもいい日は
あなたにとって特別な日
ワタシにとっては?
なんでもない日
今日の毎日こそが特別な日
/7/19『special day』
お姉ちゃんの膝の上で眠るあの子
その膝の上で眠るぼく
お姉ちゃんは本を読んでいる
木陰でそよそよ揺れる葉のしたで
あの子は眠る
あの子は落ちていく 夢の中へ
ぱちん、と弾けたようにあの子が起きた時は
木の葉が落ちてきた時だった
飛び起きて跳ねたあの子の膝に驚いたぼくは
にゃあ、と声を上げた
/7/18『揺れる木陰』
本日、真夏日。
30度なんてとうの昔に越え、額から汗を流しながら買い物袋を持つ手を握り直す。
道の向こう、信号待ちの車のボンネットからは、ゆらゆらと陽炎が見える。
(あぁ、見るんじゃなかった。さらに暑い)
ゆらゆらと景色の影が揺れる。
ふっと、影がろうそくの火のように揺れた。
(このまま。このまま溶けて消えてなくなりたい……)
ふと、そんなことを思った。
「え……?」
思わず声が出た。歩いていた足が止まる。
落ち込んでいるわけでも、何か病気をしているわけでもないのに、ふいに消えてここからいなくなりたいと思ったのだ。普段そんなことは微塵も思わない。うつなど自分とは無縁だと思うくらいに元気な自分が。
(おいでよ、と手招きされているように思えた。誰に? 誰でもない何かに――?)
それは何だったのか。何も見えない。声も聞こえない。ただ、突然頭に言葉が浮かんだ。
(ホラー……?)
浮かんだ考えを取り消すように、ぶんぶんと首を振った。暑い中首を振ったせいか、少しくらっとした。
「いやだいやだ、暑いからそんな滅入ったこと思うんだ!」
誰に言うでもなく、声に出した。
『何か』に意識を乗っ取られないように。
「アイスでも食べよ」
ちょうど300メートルほど先にコンビニの看板を見つけた。休憩でもしよう。暑い中ずっと歩いていたから、あんなことが起こったのかもしれない。このまま熱中症にでもなったら大変だ。
意識せず競歩のように急ぎ足になった。『何か』に取り憑かれまいとするかのように。
「陽炎」/7/17『真昼の夢』
たとえば、喧嘩をした時は
ココアにクッキーを添えて仲直り
たとえば、二人で外を歩く時は
何かいいことを三つずつ見つけること
たとえば、ワインを買ってきた日は
おつまみのお返しで、夜に仲良くする合図
たとえば、金曜の夜にポップコーンを買ってきたら
ソファで映画を二本見る
たとえば、休日の昼間は
チキンラーメンに卵を落としたのがお昼ごはん
ありきたりだけれど
私たち二人だけの密やかなルール
/7/16『二人だけの。』