真っ暗闇の中。
僕は浮遊している。
もうすぐここから出なければいけない。
でも、こわい。
とてもこわい。
見知らぬ世界へ飛び込むのは、とても怖い。
あぁ、でも出なければ。
頭が割れるほどに痛い。
穴から押し出されていく。
いた、いたい!いたい……!!
「おめでとうございます!」
「元気な男の子ですよ」
新しい世界へ僕は出てきた。
これからこの世界を、生きていかなければいけない。
こわいけど、生きていかなければ。
/6/28『まだ見ぬ世界へ!』
「ゆうちゃん」
私を呼ぶ声は柔らかく、春の風のようだった。
それはいつの日か木枯らしになりすっかり枯れてしまった。
「ゆうこ」
いつからか、彼は私のことを下の名前で呼び捨てで呼ぶようになった。
彼とはクラスが変わり、そして彼の声も変わった。
彼は声変わりを迎えたのだった。
「ゆうちゃん」と呼んでくれたあの日は、私の14歳の誕生日だった。
/6/27『最後の声』
たとえば、手をつなぐこと。
たとえば、一緒にごはんを食べること。
たとえば、車道を歩いてくれること。
たとえば、ドライブ中に飴を袋から出して渡してくれること。
どれも些細なこと。
いっしょに過ごしてくれることに、
「ありがとう」と小さな返愛を。
/6/26『小さな愛』
空はこんなにも黒く曇っているが
私の心はもうすぐ晴れる
雨が上がって
虹が出る
空は
ずっと晴れてもいないし
いつか雨だって止む
/6/25『空はこんなにも』
私の子どもの頃の夢。
それはお人形になること。
可愛い服を着飾ってもらって、
おしゃれな靴を履かせてもらって、
髪もアレンジしてもらったりして。
持ち主によって大事にされ方は変わってくるけれど、
子どもの手に渡ったって、その子なりの大事の仕方で
大切に、愛してくれると思うの。
私は、愛されるお人形になりたかった。
こんなに殴られたり、
髪を引っ張られたりするんじゃなくて。
同じ引っ張るにしたって、髪を結んでくれるような、
愛のある行動がよかった。
今は、半分夢が叶ったかな?
誰にでも愛してもらえるようになったの。
毎晩毎晩。
いや、夜だけでなく昼も。
呼ばれればいつだって、愛されに飛んでいくよ。
いつか愛してくれると信じていた母の代わりに
愛をくれる人たちの元へ。
/6/24『子供の頃の夢』