たとえば、手をつなぐこと。
たとえば、一緒にごはんを食べること。
たとえば、車道を歩いてくれること。
たとえば、ドライブ中に飴を袋から出して渡してくれること。
どれも些細なこと。
いっしょに過ごしてくれることに、
「ありがとう」と小さな返愛を。
/6/26『小さな愛』
空はこんなにも黒く曇っているが
私の心はもうすぐ晴れる
雨が上がって
虹が出る
空は
ずっと晴れてもいないし
いつか雨だって止む
/6/25『空はこんなにも』
私の子どもの頃の夢。
それはお人形になること。
可愛い服を着飾ってもらって、
おしゃれな靴を履かせてもらって、
髪もアレンジしてもらったりして。
持ち主によって大事にされ方は変わってくるけれど、
子どもの手に渡ったって、その子なりの大事の仕方で
大切に、愛してくれると思うの。
私は、愛されるお人形になりたかった。
こんなに殴られたり、
髪を引っ張られたりするんじゃなくて。
同じ引っ張るにしたって、髪を結んでくれるような、
愛のある行動がよかった。
今は、半分夢が叶ったかな?
誰にでも愛してもらえるようになったの。
毎晩毎晩。
いや、夜だけでなく昼も。
呼ばれればいつだって、愛されに飛んでいくよ。
いつか愛してくれると信じていた母の代わりに
愛をくれる人たちの元へ。
/6/24『子供の頃の夢』
朝。目が覚めたら、まだまどろみの中だった。
まどろみの中で知る、私は夢を見ていたのだと。
(誰かと手を繋いでいた。温かい――)
まどろみが浮かび上がっていく。
(隣にいたのは、青い瞳をした、大事な人――)
意識が、覚醒していく。
(その大事な人は、私にとても大事なことを言っていた――)
目が、覚めていく――。
(私の名前を呼んで、呼んで……。「大事なことだからね」って……。なんだっけ?思い出せない)
先程まで覚えていたはずの、大切だったはずの言葉が、朝の光に霧散した。
(とても大事なことだったのに。どうして。さっきまで覚えてたのに。あの人の顔も、もうおぼろげ……)
どこにもいかないでほしかった夢の記憶は覚醒とともに消え去り、昼には夢を見たことしか思い出せなくなっていた。
/6/23『どこにも行かないで』
誘われたから、仲間に入った。
冒険だから、共に戦った。
回復役(ヒーラー)だから、傷を治した。
咄嗟の攻撃を受けた時、あなたが私をかばった。
防護壁(シールド)が張れないから、強力な回復呪文を覚えた。
すべてあなたから始まったこと。
すべてあなたのためにしたこと。
あなたが勇敢な姿を見せてくれたから、私は――。
「どうした?」
「なんでもない」
見つめていたことがバレたが、何事もなかったようにごまかす。
「先を急ぐぞ。魔王城はすぐそこだ」
勇者の背中を見ながら、私は今日も仲間たちと冒険を続ける。
/6/22『君の背中を追って』