空を見上げて、いい天気だと思う
ごはんがおいしいと思う
生きる意味なんて、それくらいでいいと思う
/『生きる意味』
『善悪』
「あなたのこと、愛してるから、殺すわね」
堪えきれない涙をこぼして、女は包丁を振り上げた。
精神的にも体力的にも参ってしまった僕は、この日々から逃げ出したかった。
だから僕の部屋に通っていた彼女に、僕を殺してくれるよう頼んだ。
彼女は僕に頼み事をされたことに喜び、その内容に落胆した。だがすぐに顔を上げ、僕の頼みならと了承してくれた。
決行は2日後。
僕のことを大好きな人に僕を殺すことを頼むなんて、僕は大罪人かもしれない。でもいいんだ。
(僕も君のこと、大嫌いだから、君にお願いしたんだ)
4月26日19時。
僕を殺すために、彼女は渡した覚えのない合鍵を使って僕の部屋に入ってきた。
/『善悪』
昨日の分
闇を駆ける一閃を捕まえて彼は言った。
「はい。これをあげるよ」
「これ、なに?」
「流れ星。持って強く願えば、きっと叶うよ」
うつむく私に差し出された彼の手には、キラキラと光り輝くお星さま。
「君はこんなところで落ち込んでるヒマはないでしょう?」
/『流れ星に願いを』*
ひとつ、「おはよう」と「おやすみ」は必ず言うこと
ふたつ、ごはんはなるべく一緒に食べること
みっつ、隠しごとはしないこと(サプライズは除く)
同棲をする前に決めた三つのルール。
多くなく、縛りすぎず、緩すぎず。
僕たちらしい、三つのルール。
まさか半年で破られることになるなんて。
毎日言えるおやすみは、あの日おはようを言えなかった僕への罰なのかな。
/『ルール』
ちえちゃんが泣いた
大好きなアメをあげても
泣き止んでくれなかった
どうしたの? ちえちゃん
今日は雨模様かな?
帰ったらしゃぼん玉でもしようか
/『今日の心模様』
親友のあなたを好きになった。
何でも知ってて、何でもわかってくれる。
『恋人にするならこんな人がいい』。
理想がつまっていた。
互いにかけがえのない存在だったけれど、いつからか『好き』に違いが出てきた。
私は親友としての面を持ったまま、同性のあなたを恋愛対象としても好きになっていた。
後から思えば、思春期特有の同性愛が膨らみすぎただけだったけれど。
その事実に気づくのに約十年。
もはや思春期というには長すぎて、本当に恋愛対象として好きだったのか、第二次性徴期独特の感情をこじらせたのかわからない。
今でも親友として好きなのは変わらないが、あんなに焦がれることはない。
あれが恋愛感情なのか不明のまま、『恋』を知らない私は随分いい歳になってしまった。
私は同性愛者ではないから、これから恋をする相手は異性だろう。
けれど、人生の約半分を侵したあの感情を、私は間違いだと思いたくない。
確かに、私は彼女を好きだった。
/『たとえ間違いだったとしても』