親友のあなたを好きになった。
何でも知ってて、何でもわかってくれる。
『恋人にするならこんな人がいい』。
理想がつまっていた。
互いにかけがえのない存在だったけれど、いつからか『好き』に違いが出てきた。
私は親友としての面を持ったまま、同性のあなたを恋愛対象としても好きになっていた。
後から思えば、思春期特有の同性愛が膨らみすぎただけだったけれど。
その事実に気づくのに約十年。
もはや思春期というには長すぎて、本当に恋愛対象として好きだったのか、第二次性徴期独特の感情をこじらせたのかわからない。
今でも親友として好きなのは変わらないが、あんなに焦がれることはない。
あれが恋愛感情なのか不明のまま、『恋』を知らない私は随分いい歳になってしまった。
私は同性愛者ではないから、これから恋をする相手は異性だろう。
けれど、人生の約半分を侵したあの感情を、私は間違いだと思いたくない。
確かに、私は彼女を好きだった。
/『たとえ間違いだったとしても』
はらはらり。
「泣いているの?」
「どうだろうね? きいてごらん」
幼い私の問いに、母は微笑み答えた。
公園で見かけて、止めどなく流れている姿を見過ごせなかった。
母と繋いでいた手をほどいて、公園の一番奥に佇む姿に駆け寄って尋ねた。
「ねぇ、桜の木さん。どうしてそんなに泣いているの?」
純粋だった私は、散る花びらが泣いているように見えたのだ。
もちろん桜は何も答えなかった。代わりにひらりと花びらが一枚、私の鼻先に落ちてきた。
あの頃よりずいぶん小さくなった遊具に囲まれて、〈あなた〉はまだ公園の奥にいる。
今年もまた泣き出す頃だと、公園の入口のベンチに腰かけてその姿を見に来た。
今日は寒の戻りか風も冷たい。ストールを取り出したところで、強い風が肌を撫でた。
煽られた髪を整えている指先に、〈あなた〉の涙がひとつ、ふたつ。
また風に煽られて、〈あなた〉は涙がこぼれ続ける。
(桜の木さん、どうしてそんなに泣いているの?)
声に出さぬまま問う。大人になった私は、それを悲しいとも寂しいとも、嬉しいとも訳すことが出来るようになった。
桜の木はもちろん何も答えない。
/『雫』
あなたが好きです。
あなたがいれば わたしは他に何もいりません。
あなたのために わたしはすべて捨てましょう。
あなたが大好きです。
あなたがわたしを見てくれるなら
わたしは富も地位も名誉もいりません。
あなたを愛しています。
あなたがわたしを好きになってくれるなら
何不自由ない暮らしを尽くしましょう。
あなたにすべてを捧げます。
わたしを好きというあなたが
この世に存在できるように。
あなたのために
すべてを捨てて
すべてを捧げました。
あなたがわたしをキライと言うのなら
わたしはこの世に存在する意味がありません。
なにもかも 捨ててしまいましょう。
あなたのために捧げてきたもの
すべて 捨ててしまいましょう。
わたしを嫌いなあなたをも
もうなにもいりません。
あなたの他には/『何もいらない』
もしも未来のことがわかったら
あなたのことなんか 好きにならなかったかもしれない
けど あなたがいなかったら
今のわたしはいないから
未来を見れたとしても
ボロボロになることがわかっていても
あなたと友達になったでしょう
そして友達になったら
あなたの魅力にのみこまれて
やっぱり好きになるんでしょう
/『もしも未来を見れるなら』
眠ってしまえば
人は色のない世界へ行くという
/『無色の世界』