遠い約束
と 「当時の私は幼かった
ものですから、
お お父様が嘘をつくとは
思いもしませんでした」
い 「いつまでも駅の待合室で、
迎えに来てくれるのを
待っていたのです」
や 「約束したのです。
絶対にこの場所を離れないと」
く 苦しそうにそう話す
少女の瞳から涙があふれた。
そ 「そのまま歳月が経ち、
今は令和の世となったのですね」
く 九段下駅の地縛霊を祓う。
フラワー
ど どうかしていたのだろう。
ら 蘭の香りで目を覚ました。
い 生き生きとした瑞々しい生花が
空であることが常の、花瓶としての
役割も忘れ去られたような瓶に
活けられていた。
ふ ふと、視線を感じた。
ら 蘭が私を見た気がしたのだ。
いや錯覚だ。生花はただ
俯いたままそこにある。
わ わからない。何も。
ー ――。
と 問いかけることもできず、
せ せいぜい同じ空間で
気配を探るだけ。
い いつかこの蘭が、私と同じ
ドライフラワーになったなら、
そのときこそ私は――。
未だ生花が、ドライフラワーに
なった例しのないことも忘れ――。
か 乾いていたんだ。
心を潤す一滴の水が、ただ少し
欲しかっただけ。
新しい地図
あ アップデートが完了した
た 体育館が新たに造られ
ら ラーメン屋が消えて
し 知らない道ができている
い 以前と比べてみるが以前はもう
私の中には存在していないから
すぐにでも消えてしまう
ち 地図は最新だ
「ルート案内を開始します」
ず ずっとずっと以前に案内した
あの場所はどこだったろう?
好きだよ
す ストレートに
き 気持ち伝えろ
だ ダメでもともと
よ 世の中はバクチ
す ストーカーだな
き 気になる人をあるところで見た
(偶然だ)
だ だからといってどうすれば
よ 読む習慣になっている、とか
言!え!な!い!
桜
さ 「桜ってさ
く クローンなんだよね」
ら 卵子凍結
パンフレットに落ちる花びら