卵を割らなければ

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フラワー

ど どうかしていたのだろう。

ら 蘭の香りで目を覚ました。

い 生き生きとした瑞々しい生花が
  空であることが常の、花瓶としての
  役割も忘れ去られたような瓶に
  活けられていた。

ふ ふと、視線を感じた。
  
ら 蘭が私を見た気がしたのだ。
  いや錯覚だ。生花はただ
  俯いたままそこにある。

わ わからない。何も。

ー ――。

と 問いかけることもできず、

せ せいぜい同じ空間で
  気配を探るだけ。

い いつかこの蘭が、私と同じ
  ドライフラワーになったなら、
  そのときこそ私は――。
  未だ生花が、ドライフラワーに
  なった例しのないことも忘れ――。

か 乾いていたんだ。
  心を潤す一滴の水が、ただ少し
  欲しかっただけ。

4/7/2025, 11:56:51 AM