天への階が君の足元に差した。
ふわりと舞う白羽根の雨に晒され、
君は目を奪われるがままに一足伸ばした。
おそらくは姿なき声に導かれ、
おそらくは慈しむ意に包まれ、
君は光の先へと吸い込まれていく。
私はあの眩さに目を細めていた。
選ばれてある者のみを誘う神々しさに近づきようがなかった。
引き留めようと叫んでも、まるで私がその場にいないかのように届かなかった。
こんな形で見送るなんて聞いていない。
こんな形で別れるなんて望んでいない。
そうして君は光に呑まれ、私の前から消え去った。
今でも鮮やかに覚えている。
神々しい悪夢が目の前で起きたこと。
白い翼を生やした人たちに導かれる君の後ろ姿。
そして光に呑まれる前に私に見せた、物憂げな微笑み。
あの出来事が、昨日のよう。
あの時がずっと心に引っかかっている。
君を探すために私も消えてみよう。
あの場所、あの時、あの瞬間。
そちら側に連れていかれてみせる。
そのために積み重ねてみせる。
君が選ばれた理由がようやく分かったから。
その答えを教える頃には、
君に会えているから。
【君を探して】
青い空を見上げたっていいだろう。
何を願おうと、嘆こうと、喜ぼうと、
響き渡る世界に呼びかけて生きているのだから。
【嗚呼】
秘密の花園に、可憐な貴女。
見つめる子鹿と小鳥に囲まれて、
柔和に微笑んで触れ合っている。
そして大きなドレスを両手で浮かばせ、
歌いながらくるくる回る。
穢れのない幸せを噛み締めながら、
貴女は小さな従者たちを連れて湖畔へと向かった。
貴女は微睡から醒める。
白いカーテンが靡き、微かにすり抜ける日差しに柔肌を照らしている。
軽くなった瞼を開け、白く薄いブランケットに包まれた体を起こす。
おとぎの姫様に憧れていた乙女心に、思わず目を細めて笑みをこぼした。
歌詞は忘れてしまったけれど、
小気味のいい、オスティナートの旋律だけが、
貴女の忘れていた、昔の優しさを思い立たせてくれる。
【ラララ】
風の神は気まぐれだ。
ふとした思いつきで吹き込んでくる。
季節などお構いなしに駆け回る。
鬱陶しいが、頼りになる。
この星が生きている証をずっと運んでいるのだから。
【風が運ぶもの】
花々が長い夢から醒めようとしている。
離れ離れだった淡い世界がやってくる。
あの人に逢えるまでもう少し。
肌を撫でる柔らかい風に弾む心を乗せて。
【芽吹きのとき】