一花

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11/12/2023, 7:22:49 AM

使えないものなんてあったって意味が無い。
折れてしまった翼なんて邪魔なだけだからもいでしまえと背に手を回したけれど、最後のところで力を込められなかった。

だってこの翼をくれたのは貴方なんだ。
飛べなくても、みっともなくても、手放す事なんてできないよ。


『飛べない翼』

11/10/2023, 10:19:40 AM

お月見団子とススキを持って俺の家に押しかけるあなたの事うるさいなんて言ってすみませんでした。あの頃はあなたからもらえる優しさを素直に受け取るのが怖かったんです。

何年目かのお月見で、空を見上げた君はぽつりと呟いた。白い光に照らされた端正な横顔に、大きくなったなぁと感慨深い気持ちで縁台に置かれた手と手をちょっと重ねたらこちらを向かないままの頬が赤く染まった。

ススキの花言葉、知ってる?


(心が通じる)

『ススキ』

11/9/2023, 10:08:16 AM

最期の瞬間脳裏に過ぎるものって何だと思う?

僕は君の顔だと思うな。
恥ずかしそうな顔や、拗ねた顔、怒った顔に涙を堪えたしかめ面
それから控えめな花が綻ぶような微笑み
ずっと傍で見てきたから、とびきりの笑顔を持っていくよ


『脳裏』

11/9/2023, 5:39:23 AM

今になって思い至ったのだけれど、どうやら俺はあの人の事が好きだったらしい。
向こうはどうだったのかは知らない。

あの人の手の温かさや俺の名前を呼ぶ声音をもう感じられないのだな、と思ったら身体が半分無くなってしまったみたいに自分の存在が空虚になってしまった。俺が俺であると言うただそれだけの事がこんなに難儀な事だとは知らなかった。
考えてみればずっとあの人はここにいたのだ。俺の胸の真ん中に大きな顔をして居座っていたくせに、いなくなってしまうなんて酷い事をする。

もっと早くに気がつけば何か変わったのだろうか。何も変わらなかった気もする。
まあ今となっては全て意味がないことだ。


『意味がないこと』

11/7/2023, 12:26:08 PM

顔は似ていないと言われる。食べ物の好みもちょっと違う。
読書が好きなところは同じ。貧乏性なところも。
血の繋がりなんてなくたって、ずっと一緒に暮らしているんだから似てくるところもあるよね。

でもやっぱりあなたとわたしは全然違って、きっとあなたはどこか遠くに行ってしまうのだと思う。
それでも私は貴方が大事。たった一人の弟だもの。

『あなたとわたし』

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