エリンギ

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3/22/2025, 11:26:57 AM

【bye bye…】

ふわふわと地面が揺れる。来たばかりの頃は慣れなかったけど、今では自由に走ることも出来るようになった。
「おはようシャテン君、いつも早起きだねぇ」
すれ違ったお爺さんから声をかけられる。おはようございます、と返すと、彼は愛犬と朝の散歩へ出掛けて行った。
幾つかの雲を飛び越えると、目的地に着いた。白く輝く大きな建物。中に入ると扉がずらりと並ぶ。僕はいつものように「君」の誕生日と同じこと部屋番号へ向かい、静かに中へ入った。
此処は地上を覗ける場所だ。個室には双眼鏡みたいな物と、条件入力用のモニターがある。キーボードを操作し、両目をレンズに合わせた。


どうしてだろう、「君」は僕がいた孤児院へ向かっている。院長が親しげに声を掛ける。まさか。

僕があそこを去る時、院長は言った。
「実はあの虹、もう1人見ていた子がいたんだ。聡明で、名前の由来も似ている。会わせてやりたいが、部屋に閉じこもっているからなぁ」
無理に会うのも違うと思い、僕はその子に会わないまま孤児院を後にした。そして結局、会うことはできなかった。そう、思っていたけど。

急いで部屋を出る。不安定な雲の上を走り、一軒の小屋に辿り着いた。
「おお、どうしたどうした」
息を切らした僕を見て、中にいた人物が驚きの声をあげる。白い髭に白い装束。この一帯を司る「マスター」である。詳しい正体は不明だが、フランクな神様といったところだ。
「マスター、虹をかけたいんです」
「虹を?ほう、待っておれ」
すぐに虹を作ろうとするマスターを遮る。
「自分で、作ってもいいですか」
僕は此処に来てから、色んなことを知った。その一つに『能力』がある。一人一人に大切だったものやことに関する不思議な力が芽生えるのだ。
僕には、小さな虹をかける能力があった。それを見たマスターは、頑張れば空にかけることができるかもしれない、と僕を特訓してくれていた。
呼吸を整え、全身の力を集中させる。

執筆中…

3/21/2025, 11:31:07 AM

【君と見た景色】

君が切り取る景色には、いつだって私がいた。

春は桜。
夏は海。
秋は紅葉。
冬は雪山。

君と見た景色は、どれも綺麗だった。

もう増えないメモリ。

ごめんね。

fin



【手を繋いで】
※ミスってお題が消えちゃったのでここに書きます!

眠れない夜、
ぬいぐるみと手を繋いで。

休み時間、
友達と手を繋いで。

放課後の屋上、
君と手を繋いで。

悲しくなったら、
手を繋ごう。

fin

3/20/2025, 8:53:18 AM

【どこ?】

「…ここ、どこ?」
見渡す限り近未来的な建物が立ち並んでいる。先程までは田園が広がっていたはずだ。
立ち上がり地面を見ると、灰色ではなくショッキングピンクだった。
「え、ますますどこ?」
テーマパーク?そんなものあるわけない。ここ田舎だし。…ここというか、少なくとも数秒前までいた場所だが。
『ここは、2100年です』
突如、頭上から声が降ってきた。思わず後ずさる。
『私はAIのアイです。あなたの疑問にお答えしました』
まじかよ、未来?クワガタをチョップしたわけじゃあるまいし←
『あなたは大臣からの指名でここに連れてこられました。早く政治塔へ向かって下さい』
意味わかんない、と呟く暇もなく体は北へと方角を変える。そんなこともできんのかよ22世紀…

そんなこんなで始まった未来旅。
続く、かも。

fin

気が向いたら続き書きます。
クワガタの件は分かる人には分かるかも?

3/19/2025, 6:19:51 AM

【大好き】
※微薔薇注意

「大好きだよ」
君はよくそう言う。柔らかな微笑みで、穏やかな声色で。

僕は嬉しい。でも、同時に悲しい。

僕の大好きと、君の大好きは違うから。

細い手足に女子顔負けの大きな目、少し癖のある髪の毛。何もかもが僕には輝いて見える。
好きで、好きで、どうしようもない。

「大好きだよ」
今日も君はそう言う。眼鏡越しに見る顔は、やっぱり綺麗で。

どこが大好きなの?
何で大好きなの?
僕も大好きだよ。

言いたいのに、言えないまま。

「ありがとう」
感謝しているはずなのに、なぜか視界がぼやけてく。

fin

気軽に言えるからこそ、相手との齟齬が生まれがち。

3/17/2025, 12:40:32 PM

【叶わぬ夢】

『夢は必ず叶うから』
ありきたりなフレーズに辟易してイヤフォンを取る。後ろから笑い声と共に自転車が2台通り過ぎた。
「必ず叶う、ねぇ」
んなわけないって、と1人毒づく。
私には叶わぬ夢がある。
ショーウィンドウに映る自分を見てため息を吐く。
ロングの金髪に短いスカート、ルーズソックス。装飾をいくら似せたところで、所詮私は“男”なのだ。

「女の子に生まれたかった」
小学生の頃呟いた夢に、両親も先生も笑っちゃうくらい慌てた。それで、ああこの夢は叶わないんだ、叶っちゃいけないんだと思った。
それでも諦めきれなくて、スカートに足を通した。
誰にも見つからないように。その意識がある時点で夢など程遠かった。

「超似合うやん」
そう言ってくれた人はいた。初めて褒めてもらえて嬉しかった。
でも、私の夢は夢のままだ。

家に向かう足は重い。英単語を聞きながら、着せ替え人形の私は歩き出す。

fin

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