エリンギ

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【bye bye…】

ふわふわと地面が揺れる。来たばかりの頃は慣れなかったけど、今では自由に走ることも出来るようになった。
「おはようシャテン君、いつも早起きだねぇ」
すれ違ったお爺さんから声をかけられる。おはようございます、と返すと、彼は愛犬と朝の散歩へ出掛けて行った。
幾つかの雲を飛び越えると、目的地に着いた。白く輝く大きな建物。中に入ると扉がずらりと並ぶ。僕はいつものように「君」の誕生日と同じこと部屋番号へ向かい、静かに中へ入った。
此処は地上を覗ける場所だ。個室には双眼鏡みたいな物と、条件入力用のモニターがある。キーボードを操作し、両目をレンズに合わせた。


どうしてだろう、「君」は僕がいた孤児院へ向かっている。院長が親しげに声を掛ける。まさか。

僕があそこを去る時、院長は言った。
「実はあの虹、もう1人見ていた子がいたんだ。聡明で、名前の由来も似ている。会わせてやりたいが、部屋に閉じこもっているからなぁ」
無理に会うのも違うと思い、僕はその子に会わないまま孤児院を後にした。そして結局、会うことはできなかった。そう、思っていたけど。

急いで部屋を出る。不安定な雲の上を走り、一軒の小屋に辿り着いた。
「おお、どうしたどうした」
息を切らした僕を見て、中にいた人物が驚きの声をあげる。白い髭に白い装束。この一帯を司る「マスター」である。詳しい正体は不明だが、フランクな神様といったところだ。
「マスター、虹をかけたいんです」
「虹を?ほう、待っておれ」
すぐに虹を作ろうとするマスターを遮る。
「自分で、作ってもいいですか」
僕は此処に来てから、色んなことを知った。その一つに『能力』がある。一人一人に大切だったものやことに関する不思議な力が芽生えるのだ。
僕には、小さな虹をかける能力があった。それを見たマスターは、頑張れば空にかけることができるかもしれない、と僕を特訓してくれていた。
呼吸を整え、全身の力を集中させる。

執筆中…

3/22/2025, 11:26:57 AM