【叶わぬ夢】
『夢は必ず叶うから』
ありきたりなフレーズに辟易してイヤフォンを取る。後ろから笑い声と共に自転車が2台通り過ぎた。
「必ず叶う、ねぇ」
んなわけないって、と1人毒づく。
私には叶わぬ夢がある。
ショーウィンドウに映る自分を見てため息を吐く。
ロングの金髪に短いスカート、ルーズソックス。装飾をいくら似せたところで、所詮私は“男”なのだ。
「女の子に生まれたかった」
小学生の頃呟いた夢に、両親も先生も笑っちゃうくらい慌てた。それで、ああこの夢は叶わないんだ、叶っちゃいけないんだと思った。
それでも諦めきれなくて、スカートに足を通した。
誰にも見つからないように。その意識がある時点で夢など程遠かった。
「超似合うやん」
そう言ってくれた人はいた。初めて褒めてもらえて嬉しかった。
でも、私の夢は夢のままだ。
家に向かう足は重い。英単語を聞きながら、着せ替え人形の私は歩き出す。
fin
3/17/2025, 12:40:32 PM