エリンギ

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2/19/2025, 12:00:43 PM

【あなたは誰】

その日は2月にしては暖かく、柔らかな日が差していた。私は塾に行くために、駅前のロータリーでバスを待っていた。
スマホを弄るのにも飽きて顔をあげると、隣に人が座って来た。
長い金髪。長めのネイル。ダボダボのパーカーに超ミニ丈スカート。ルーズソックスに厚底スニーカー。まさに「ギャル」なその人から、私は少し距離を取った。苦手な人種すぎる。陽キャの最たるものだろ、ギャルって。
遠くをぼんやりと見つめる彼女を、やることもないので仕方なく見つめる。通った鼻筋に白い肌。よく見れば見るほど整った顔をしている。
ふと、彼女の目元に目が止まった。
涙袋から斜めに3つ。オリオン座のように並ぶほくろに、親近感を覚える。教室の廊下側、右隣。学ランのボタンはしっかり閉まっている。珍しいなと思った記憶がある…え、どういうこと?
あ、やば。
私が記憶をフル回転しているうちに、目が合ってしまった。穴が開くほど見つめていたから、失礼に思われないだろうか。
「?!」
すると、今度は向こうが距離を取った。いや、驚いて仰け反った形だ。一重は目一杯開かれ、あんぐりと口が開いている。
「あの…あなたは、誰?」
恐る恐る聞いてみると、顔を真っ赤にした彼女から小声で返答が来た。
「…誰にも言わないで」
私の隣の席、学年1位の優等生君の声に間違いなかった。
「え…超似合うやん」
思わず漏れた感想に、女子顔負けの可愛い照れ方をする彼。
ロータリーにバスが到着した。

fin

2/18/2025, 10:23:44 AM

【手紙の行方】
※【隠された手紙】の続きです!

「で、結局見つかったの?」
目の前に立つ4人の執事に向かって言い放つ。形のいい唇はひとつも開かれない。
「どうなの!」
「…見つかりませんでした。申し訳ございません」
強めに問いかけると、年長のマユが頭を下げ答えた。彼は優しいので、こうすると後輩を庇って大抵口を割ってくれる。
「大体、あんな広い屋敷に4人じゃ見つかりませんよ」
「黙って」
ったく。ナギサは態度が悪い。ルックスはピカイチなのに、勿体ないとつくづく思う。
「まあまあ…すみません、僕たちも頑張ったんですが」
それに比べてカエデは礼儀正しい。マユに憧れている影響か、若いのにしっかり者だ。
「あのぅ、その手紙って何が書かれてるんですかぁ?」
う、上目遣いは反則だわっ!ルイは本当に可愛い。愛しのルイに言われたら、答えたくもなるけれど…
「それは言えないの。ごめんなさいね」
しゅんとした様子のルイ。ああ、罪悪感…。
とはいえこれは大ピンチだ。ご苦労様、と声をかけ、4人を部屋から追い出す。あのお屋敷にないのなら、一体どこに行ってしまったのかしら…。世に出たらまずいっていうのに…。

            *

「これ、やっぱホントなんですね!」
部屋を出るや否や、ルイが興奮気味に僕のポッケにある手紙を指さす。ちょっと声大きいよ、とマユさんが制する。
「てかあの人のルイへの目ヤバくね?キモいんだけど」
「それなです」
ナギサさんの少々毒強めの言葉に、僕も首を振って同意する。
「多分自分が執事に出し抜かれるなんて思ってないんすよ。ちょっと強めに言えばマユさんが折れるとか、単純すぎる話術振りかざしてるもん」
ルイが呆れたように言う。さすがお嬢様のお気に入り。思考回路がよくわかっている。
「それ使って、みんなの給料上げる?あ、週刊誌に売るのがいいかも!ついでに過酷な労働環境とか言ってちょっと盛れば、お嬢様の名声地に突き落とした上で辞められるよ♪」
マユさんが天使のような笑みで毒を吐く。やっぱこの人すごい…敵に回したくない…。
「じゃ、とりあえずカエデ預っといて。おやすみ!」
真っ先に部屋に入るナギサさん。おやすみなさい、と言いながらルイも扉を開ける。隣に立つマユさんが、僕の手にあるそれを見て言った。
「カエデ、お手柄だね」
浮気相手の妻から送られてきた封筒には、証拠写真と怒りの手紙が。引き出しを漁っていた僕が見つけ、嘘をつくことにしたのだ。
「いや、それほどでも…」
夜が更けていく。僕たちのクーデターが動き出した。

fin

2/17/2025, 10:26:55 AM

【輝き】

貴方の瞳の輝きに、

私はきっと勝てない。


貴方の容姿の輝きに、

私はきっと勝てない。


貴方の能力の輝きに、

私はきっと勝てない。


貴方の経験の輝きに、

私はきっと勝てない。


でも私にも、

私だけの輝きがあるはずだから。

自信持って生きてこ!

fin

2/16/2025, 11:04:12 AM

【時間よ止まれ】

執筆中…

2/15/2025, 12:47:41 PM

【君の声がする】

ひんやりとした廊下は、上履きの足音さえ大きく響く。
ここは北校舎。生徒が主に使っている南校舎とは違い、どこか厳正な雰囲気が漂う。
使っている部活は文化部が多く、テニス部のあたしには特別教室利用以外に縁が無い。
現在は放課後。今日は部活が無いため制服で階段を登る。
あたしが何でここに来ているのか。
その理由は、最上階である4階にある。
正面には、使われなくなった空き教室。
その中から、美しいメロディーが聞こえてくる。

そう、ここからは、
君の声がする。

目を閉じ、耳を澄ます。やわらかでありながら芯のある声は唯一無二で、あたしのスカートを揺らすように響く。

執筆中…

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