【手紙の行方】
※【隠された手紙】の続きです!
「で、結局見つかったの?」
目の前に立つ4人の執事に向かって言い放つ。形のいい唇はひとつも開かれない。
「どうなの!」
「…見つかりませんでした。申し訳ございません」
強めに問いかけると、年長のマユが頭を下げ答えた。彼は優しいので、こうすると後輩を庇って大抵口を割ってくれる。
「大体、あんな広い屋敷に4人じゃ見つかりませんよ」
「黙って」
ったく。ナギサは態度が悪い。ルックスはピカイチなのに、勿体ないとつくづく思う。
「まあまあ…すみません、僕たちも頑張ったんですが」
それに比べてカエデは礼儀正しい。マユに憧れている影響か、若いのにしっかり者だ。
「あのぅ、その手紙って何が書かれてるんですかぁ?」
う、上目遣いは反則だわっ!ルイは本当に可愛い。愛しのルイに言われたら、答えたくもなるけれど…
「それは言えないの。ごめんなさいね」
しゅんとした様子のルイ。ああ、罪悪感…。
とはいえこれは大ピンチだ。ご苦労様、と声をかけ、4人を部屋から追い出す。あのお屋敷にないのなら、一体どこに行ってしまったのかしら…。世に出たらまずいっていうのに…。
*
「これ、やっぱホントなんですね!」
部屋を出るや否や、ルイが興奮気味に僕のポッケにある手紙を指さす。ちょっと声大きいよ、とマユさんが制する。
「てかあの人のルイへの目ヤバくね?キモいんだけど」
「それなです」
ナギサさんの少々毒強めの言葉に、僕も首を振って同意する。
「多分自分が執事に出し抜かれるなんて思ってないんすよ。ちょっと強めに言えばマユさんが折れるとか、単純すぎる話術振りかざしてるもん」
ルイが呆れたように言う。さすがお嬢様のお気に入り。思考回路がよくわかっている。
「それ使って、みんなの給料上げる?あ、週刊誌に売るのがいいかも!ついでに過酷な労働環境とか言ってちょっと盛れば、お嬢様の名声地に突き落とした上で辞められるよ♪」
マユさんが天使のような笑みで毒を吐く。やっぱこの人すごい…敵に回したくない…。
「じゃ、とりあえずカエデ預っといて。おやすみ!」
真っ先に部屋に入るナギサさん。おやすみなさい、と言いながらルイも扉を開ける。隣に立つマユさんが、僕の手にあるそれを見て言った。
「カエデ、お手柄だね」
浮気相手の妻から送られてきた封筒には、証拠写真と怒りの手紙が。引き出しを漁っていた僕が見つけ、嘘をつくことにしたのだ。
「いや、それほどでも…」
夜が更けていく。僕たちのクーデターが動き出した。
fin
2/18/2025, 10:23:44 AM