エリンギ

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【あなたは誰】

その日は2月にしては暖かく、柔らかな日が差していた。私は塾に行くために、駅前のロータリーでバスを待っていた。
スマホを弄るのにも飽きて顔をあげると、隣に人が座って来た。
長い金髪。長めのネイル。ダボダボのパーカーに超ミニ丈スカート。ルーズソックスに厚底スニーカー。まさに「ギャル」なその人から、私は少し距離を取った。苦手な人種すぎる。陽キャの最たるものだろ、ギャルって。
遠くをぼんやりと見つめる彼女を、やることもないので仕方なく見つめる。通った鼻筋に白い肌。よく見れば見るほど整った顔をしている。
ふと、彼女の目元に目が止まった。
涙袋から斜めに3つ。オリオン座のように並ぶほくろに、親近感を覚える。教室の廊下側、右隣。学ランのボタンはしっかり閉まっている。珍しいなと思った記憶がある…え、どういうこと?
あ、やば。
私が記憶をフル回転しているうちに、目が合ってしまった。穴が開くほど見つめていたから、失礼に思われないだろうか。
「?!」
すると、今度は向こうが距離を取った。いや、驚いて仰け反った形だ。一重は目一杯開かれ、あんぐりと口が開いている。
「あの…あなたは、誰?」
恐る恐る聞いてみると、顔を真っ赤にした彼女から小声で返答が来た。
「…誰にも言わないで」
私の隣の席、学年1位の優等生君の声に間違いなかった。
「え…超似合うやん」
思わず漏れた感想に、女子顔負けの可愛い照れ方をする彼。
ロータリーにバスが到着した。

fin

2/19/2025, 12:00:43 PM