私は探してる
誰そ、彼
誰そ、彼
夕と宵が溶け込む時
誰そ、彼
誰そ、彼
藍と朱の混ざる、あの瞬間
誰そ、彼
誰そ、彼
世界の終わりのような光景なれば
誰そ、彼
誰そ、彼
彼の岸から迷い混んで、攫って頂戴?
誰そ、彼
誰そ、彼
赤い花を携え、祈る様に、呪う様に、
誰そ、彼
誰そ、彼
近付く誰かに、あなたの影を見る
誰そ、彼
たそ がれ
…なんて、聞かなくても
あなたはもう、居ないのにね
どさどさどさ。
女はしでかしたな、と悟った
積み上げた分の重みと散乱振りに
否応もなく目が醒めた
時を刻む音すら聞かず
女はどっぷり浸かって眠ってた様で
ベージュの絨毯には踏み場も無い程に
厚みある本達はぐっちゃぐちゃ
はあさてどうしたものか。
物臭な女は頭を掻くが気付き顔で
赤と黄の装丁が混ざり落ちて秋らしい様相
いやはや乙なものだねと一人ぼやく
「そんな訳ないでしょうが」
音に気付いた同居人は
扉の先の光景に悲嘆しつつ
紅葉部屋と宣い創り上げた女に
呆れて言った
彼は駆け抜けた。
ただがむしゃらに、
振り返る事もなく、
只管目の前をはしって。はしって。はしって。
そうして見上げた景色は
彼の手に入れたかったものではなく
雨でつまずいた弾みに転げ堕ちてしまった
その姿を見て
誰かが嗤う
誰かが呆れる
誰かが同情する
何の為にはしり続けたか。
何の為に振り返らなかったのか。
何の為にこんなところまでやってきたのか。
そうして最後に口を揃えて
「何をしたかったんだ」と詰ってくる。
疲れたろ?
羽を休めりゃいいのさ
静かに眠って仕舞えばいい。
ああ、でも
それでも彼はー
中天に輝く、その光を
世界を照らす、ひとりぼっちのその星へ
行ってみたいと。思ってしまったのだから。
駆ける。駆ける。駆ける。
空を駆ける。ただただ駆ける。
遠く届かない場所だって知ってるさ
そうだとしても
ひとり世界を照らすその光に、
「寂しくないの」と聞きたくなったから
奔る。奔る。奔る。
最早意味なんてないだろう。
理由なんて後付けで羽だってボロボロさ
きっと生まれた時
自分を照らしたその「陽光」に
一目で恋に堕ちちゃったからさ
仕方ないだろう?
時間よ、止まれ
そんな事、考えた事ないかい?
時間よ、止まれ
甘美で優しいお伽噺の様な
時間よ、止まれ
悲しい事も戦争も無い平和な日々
時間よ、止まれ
誰も彼もが羨む理想郷!
時間よ、止まれ
君といつまでも一緒に居られる夢の世界
時間よ、止まれ
誰も邪魔しない、幸福で美しい
時間よ、
…なんて
時間よ、
なんで。
時間は、
君は、微笑んで
止まったまま
眠り続けてしまったんだい?
動かない
星は、ソラが生み出した人へのしるべ
キラキラと、命を輝かせ示してくれた光
わたしたちはアナタ達に何も返せないけど、
なればこそ、わたしたちも魅せるのです
ソラへも届く、人の造った夜景の灯り