『あなたがいたから』
あなたがいたから、たくさん笑えた。
あなたがいたから、泣くことができた。
あなたがいたから、優しくなれた。
あなたがいたから、強くなれた。
あなたがいたから、前を向くことができた。
あなたがいたから、前進することができた。
あなたがいたから、人を好きになる素晴らしさを知ることができた。
あなたがいるから、私自身の考えや思いを改めて知ることができた。
私には、多くの「あなた」がいる。
その人たちに支えられている今を、あなたと共有できている私は幸せ者だ。
あなたがいたから、幸せを感じていられる。
『相合傘』
私が忘れられない、まだ学生だったあの日の話でもしようか。
仲がいい友人数名と、とある検定の試験会場から帰ろうとした時のこと。
その日の天気予報では雨となっていた。試験会場に入るまでは曇っていて降ってはいなかったが、大体の人は傘を持ってきていた。私もそのうちの1人だ。
しかし、友人のうち2人が傘を持ってきていなかった。
帰ろうとなった時、試験会場から徒歩数分の場所にある駅でさえ傘無しではびしょ濡れになるほどの雨が降っていた。私は2人がそれぞれ誰かの傘に入ればいい、1人どちらかを私の傘に入れようと考えた。
その時だ。私が密かに好意を寄せていた彼女が、「これに2人入れるだろう」と少しぶっきらぼうな言い方で自身の傘を差し出したのだ。私は言葉にしなかったものの「優しいな。でも貴女はどうするの?」と思っている間に当たり前のように何も言わず、私の傘に入って来たのだ。
あの時、なぜ私の傘を選んでくれたのかは大人になった今でも謎のまま。聞けないままでいるけれど、目を閉じ思い出すと今でもあの時のときめきを感じられる。
人との関係に少し不器用なところがあるけど、優しさに包まれた貴女が好きだと改めて思えた相合傘。
『一年前』
一年前の私は引っ越しを目の前にワクワクとドキドキで胸が騒がしかった。仕事では次の人たちに引き継ぎをして、家では荷造りをして結構バタバタ。
あと一ヶ月もしないうちに実家を出て一年になる。
実家を出て大変なこともあるけど、一人の時間も確保できて自分らしく生きていけてると思う。
お金があるわけでもないし、パートナーがいるわけでもないけど本当に幸せ者だなと感じる。側から見ればもっとこうすれば良いのにという人生かもしれない。しかし、身の丈にあった幸せを感じられる。そんな今を一年前は想像できていなかった気がする。
一年前の私、とりあえず一年後の私はその選択した道を正解にしたぞ。
『私の好きな本たち』
私は幼少期の頃から本を読むことが好きだった。
そのおかげで、好きな本はたくさんある。尊敬する作家もたくさんいる。だからこそ、好きな本を一冊に絞るのは難しい。
そもそも“好きな本“の定義はなんだろうか。
本のジャンルやストーリー、言葉選び、挿絵。はたまたその本の香りや触り心地なんかが好きという人もいるかもしれない。きっと計り知れない。
そうなると私の好きな本は、あの頃読み聞かせてもらった“思い出の本たち“ということになる。そう、一冊では収まらないのだ。なんせ読み聞かせてくれたのは一人ではない。父や母、祖母、姉までも。寝る前に私が寝るまでたくさんのお話を読み聞かせてくれた。
正直、全ての本を覚えている訳ではない。なんせ数が多すぎるし、20年近く前の話。しかし、色濃く鮮明にあの時を覚えている。あの頃の本を大人になった今読み返すことで新たな発見や“好きな本”に出会えるかもしれない。
『勿忘草』
ねえ、知ってる?勿忘草っていう花。そう、小さくて淡いブルーの花。私嫌いだったんだ。だってあの真っ赤な人目を惹く薔薇や明るい太陽に向かって、うんと背を伸ばす向日葵のようには到底なれないんだもの。
でもね、彼が言ったの。
「勿忘草の花言葉は、”真実の愛“それから“誠の愛”なんだって。とても素敵だね。」って。とても愛おしそうに私を見つめて言うんだもの。
その瞬間恋に落ちたわ。
他にも「今日も小さくて可愛らしいね。」とか「水が滴るとより綺麗だね。」なんて、恥ずかしくなるようなことを平気で言うんだもの。
まさかよね、短い生命(いのち)の私が恋なんて。しかも人間の彼に。お天気のいい日はこちらに来てお話しながらお水をくれるの。といっても、さっき述べた通り彼が一方的に優しい言葉を掛けてくれるだけなんだけど。
でもそろそろお別れね。最近の気温が私には合わないみたいで、彼も心配そうに見てるわ。大丈夫よ。また時が来れば運が良ければここで逢いましょう。
だけどその時まで“私を忘れないで”…。