心の羅針盤がぐるぐる回る。
だけど、針がピタリと止まる位置はいつも同じ。
毎度、あの人がいる場所を指してしまう。
どれだけ優しい彼と付き合っても、どれだけタイプな彼と付き合っても、針が示す位置は変わらない。
あの人の羅針盤は、もう私を指していないのに。
早く狂ってしまえ。
こんな羅針盤。
ああ、誰か。
磁石のように私を引きつけて、
早くこの羅針盤を狂わせて。
書きたいと思う日もあれば、書きたくないと思う日もある。
書きたいと思える日が来るまで、またね。
歩く。あなたと手を繋いで。
いつ、この手を離してしまったのだろう。
あの頃は、ただ夢中だった。
自分のことで精一杯で、あなたの痛みに気付けなかった。
気付いた時には、もう遅くて。
伸ばした手は空を切り、呼ぶ声は届かなかった。
でも今、こうして隣にいる。
温もりが、確かにここにある。
大切なものは、いつだってすぐそばにあったのに。
気付けなかったのは、自分の方だった。
もう二度と、この手を離さない。
何があっても、離しはしない。
あなたと私。
あなたがいるから、私が存在する。
あなたは私がいなくても関係ないかもしれないけれど、私にはあなたが必要なの。
あなたは私のすべて。
あなたの笑顔は、私の暗闇を照らす光。
あなたの声は、私の耳に響くメロディ。
あなたと過ごす時間は、この世で一番の宝物。
あなたがいるから、私は生きていける。
あなたがいてくれないなら、私なんていらない。
眠りにつく前に、どうしても確認してしまう。
あなたからのメッセージが届いていないか、スマホの画面をそっとなぞる。
ついさっきも見たばかり。届いていないことなどわかりきっているのに。
それでも、指が勝手に画面をタップしてしまう。
今頃あなたは私のことなど忘れ、彼女の細い肩を抱いて眠っているだろう。
それでもいい。それでもいいから。
二番目でいいから、そばにいたい。なんて……
「……バカ、だよね」
自分でもわかっている。
都合のいい女だって。
あなたは彼女を愛しているし、別れるつもりもないだろう。
それでも、『好きだよ』と囁く声音が優しくて、抱き寄せる腕が温かくて、私は離れられない。
部屋の明かりを消し、スマホを握りしめたままベッドに潜り込む。夜中でも、彼の連絡にいつでも答えられるように。
『愛してる』と打ちたい指先をぎゅっと握り、目を閉じる。
どうか、明日はあなたから連絡が来ますように。