NoName

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8/13/2025, 4:21:18 PM


ずっと好きだった。
ずっと言えなかった。

でも、今日こそ。

そう思っていつもの居酒屋に呼び出した彼は、乾杯する前に言った。

「おれ、やっと彼女できたんだ」

少し照れながら笑う彼に、私はもう何も言えなくなった。

「……おめでとう」

そう言うのが、精一杯。
乾杯して、一気にお酒を飲み干した。

「おいおい、そんなに飛ばして大丈夫か?」
「平気だよ。おめでたいし、飲まなきゃね」

私はちゃんと笑えているのだろうか。
心配になり、空になったグラスに視線を落とす。騒がしい店の中、カランと鳴る氷の音だけが、やけに大きく耳に響いた。


店を出て、夜風に吹かれながら家まで歩く。
足元だけ見て、彼の笑顔を思い出さないようにして。

部屋に着いても、電気はつけなかった。
靴を脱ぎ、鞄を置いて、まっすぐ鏡の前に立つ。
暗がりの中、ぼんやりと映る自分の顔。
その中で、彼が「似合う」と言ったローズピンクのリップだけが、薄く色を残していた。

その言葉を間に受けて、会う日はいつもこれを塗っていた。
季節が変わっても、服の色が変わっても、唇だけはずっと同じだった。
それが今日も残っているのが、なんだか滑稽で、少しだけ痛い。

鏡の中の自分は、何も言わない。
ただ、引き結んだ唇だけそっと動かしてみる。
拭き取る前に、最後に。もう塗ることのないローズピンクの唇が形をつくる。

……すき、だったよ。

それは言葉にはならず、鏡の中で静かに消えていった────

8/7/2025, 3:41:57 PM


心の羅針盤がぐるぐる回る。
だけど、針がピタリと止まる位置はいつも同じ。

毎度、あの人がいる場所を指してしまう。

どれだけ優しい彼と付き合っても、どれだけタイプな彼と付き合っても、針が示す位置は変わらない。

あの人の羅針盤は、もう私を指していないのに。

早く狂ってしまえ。
こんな羅針盤。

ああ、誰か。

磁石のように私を引きつけて、
早くこの羅針盤を狂わせて。

8/6/2025, 5:42:20 PM


書きたいと思う日もあれば、書きたくないと思う日もある。

書きたいと思える日が来るまで、またね。

3/20/2025, 1:12:51 PM



歩く。あなたと手を繋いで。

いつ、この手を離してしまったのだろう。

あの頃は、ただ夢中だった。
自分のことで精一杯で、あなたの痛みに気付けなかった。

気付いた時には、もう遅くて。
伸ばした手は空を切り、呼ぶ声は届かなかった。

でも今、こうして隣にいる。
温もりが、確かにここにある。

大切なものは、いつだってすぐそばにあったのに。
気付けなかったのは、自分の方だった。

もう二度と、この手を離さない。
何があっても、離しはしない。


11/8/2024, 4:16:15 AM

あなたと私。


あなたがいるから、私が存在する。

あなたは私がいなくても関係ないかもしれないけれど、私にはあなたが必要なの。

あなたは私のすべて。

あなたの笑顔は、私の暗闇を照らす光。

あなたの声は、私の耳に響くメロディ。

あなたと過ごす時間は、この世で一番の宝物。

あなたがいるから、私は生きていける。

あなたがいてくれないなら、私なんていらない。


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