キミに会いたくて、ボクは空を飛んで行く。
どんなに遠くても、夢の中ならひとっ飛びでキミの元いける。
瞬きしてる間に、ほら、もうついた。
キミはもう寝ている時間だろう。
本当はたくさんお話ししたいけど、でもいいんだ。
その寝顔を見られるだけで、ボクは幸せだから。
キミはどんな夢を見ているんだろう?
ボクも夢の中に入りたいけれど、ボクが入るとキミはきっと疲れてしまう。だからボクは枕元に立って、ただキミを見つめる。
時々ぴくっと動くまぶたが可愛くて、ついつい微笑んでしまう。
もっともっと見ていたいけど、もう帰らなきゃ。
パパがボクを呼んでるから。
でも、次来るときは帰らなくてすむと思うから、そのときはずっとそばにいさせてね。
キミの隣にずっとずっと。
ねえ、だいすきだよ。
木枯らしが鳴くと、枝の上で色をなくした木の葉がいっせいに渇いた音を立て始める。
靴底から這いあがる冷気に身を縮こまらせて歩いていた俺は、ふとその音に足を止め、街路樹を見上げた。
ずいぶんと葉っぱが落ちている。
今年ももう、終わりが近いのか。
時の流れの速さを思い出し、ゆっくりと目を閉じる。
10年前、大病を患った。
体調のおかしさに気付きながら、特に理由もないまま後回しにした結果だった。
すっかりと気落ちした俺は、病室の窓から毎日木を眺め、『あの葉っぱが全て落ちたら俺は……』なんて本気で思っていたが、治療を重ね、今がある。
別にやりたいことなどなかった。
ただ、なんとなく生きていた。
だが、全てを失いかけて、この世の尊さを知った。
あの経験がなければ、木枯らしの音に耳を傾ける俺はいなかっただろう。
今も、やりたいことなど見つかっていない。
ただ、生きる。
それがどんなに難しくて、どんなに尊いのかを知っただけだ。
だけど、そうだな……
少しだけ人に優しくなった気がする。
だって、ほら。
目を開けた先にいる老婦人が重そうな荷物を抱えながら、大変そうにしているのが見えるんだから。
以前は見えなかった。見ようともしてなかった。
「よぉ、おばあちゃん。何か手伝おうか?」
俺がそう声をかけると、老婦人は驚きながらも、嬉しそうな光が目に宿る。
ああ、今日もいい日だな。
この世界は欺瞞に満ちている。
だから俺は信じない。
誠実さも、愛も、未来も、全部嘘だ。
何が「損切りは早めに」だ。
投げ売った株が翌日にストップ高。
ほら見ろ、世界は俺を嵌めにきている。
どうして、こう毎日毎日ゴミは出るんだろう。
生きてるからか?
一生懸命生きてるからなのか?
いや、哲学的な話はよそう。
今はただ、このゴミたちを纏めないと。
おっと、収集車の音が聞こえてきた。
急がないと。
ああ、このゴミがお金ならいいのに。
そしたら溜まる前に使って、収集車に急かされることもないのに。
変わらないものなんて、何もない。 ずっとそう思ってきた。
でも、あなたへのこの想いだけはずっと変わらない。あの時の形のまま、こびりついたように、今も残ったままだ。
別れてもう、五年も経つのに。
いつになったら、消えてくれるのだろう。
泡のようにパチンと割れて、跡形も消散してしまえばいいのに。
風の噂で、あなたが結婚したと聞いた。
相手は、あなたが勤めていた会社の社長令嬢。
いわゆる逆玉の輿。
昔から有能で、仕事もできて、野心もあった。
今頃はもう、こんな女のことなんて忘れ、新しい人生を謳歌しているのだろう。
私だけ、ずっとこのままだ。
あなたが結婚しても、新しい女と不倫しても。
でも、それでいいのかもしれない。
もう二度と、あなたの浮気に悩まされることはないのだから。