もしも君が、生き返るのなら
僕は、なんでも差し出す
この命さえも
※ ※ ※ ※
『ねえ、もしも…、わたしが生まれ変わったら
また恋人にしてくれる?』
そう言って、生気のない顔で力なく笑った君は
もう長くは生きられないと、医者から聞いたらしい
僕は、どんどん弱っていく君を
ただ見つめることしかできなった
君が苦しんでいるのに…、僕はなにもしてあげれれない
だんだんと…痩せていく、
歩くこともできない、
目を覚まさない日もあった
そのたびに、死んだんじゃないかって、怖くなって
素人から見ていても、彼女がもう長くはないことは
わかりきっていた
※ ※ ※ ※
彼女が死んだあとは…、よく覚えていない
お葬式の記憶さえも危うい
でも、棺桶に入っていた君の顔だけが鮮明に思い出せる
そのたびに、涙が溢れ、悲しみに暮れていた
もしも、また君が僕の隣で、笑ってくれるのなら
もしも、君とこれからも過ごすことを許させるのなら
いや、それは贅沢な願いだ
もしも、君がまた、
友人と笑い合って、家族と過ごせるときがくるのなら…
僕は、喜んでこの命さえも、差し出す
それは、ただの自己満足に過ぎないのだろうか
どうしてこの世界は、
こんなにもつらくて、残酷なんだろう
毎晩、毎晩
わたしは明日を生きるのが怖くなる
永遠に明日にならなければいいと思う
でも、それが叶わないことも、もう知ってる
今この時、
1秒、1分、1時間と時間が過ぎてゆく
また、明日が始まっちゃうね
夢見る少女のように
あの頃のように、夢を見てはいられないな
あの頃は、「着物屋さんになりたい!」
って、思ってたっけ
あの頃は、未来は明るいと思ってた
自分はどんな大人になるのか、楽しみだった
大人になったら、素敵な人と結婚して
子供にも恵ませて、幸せに暮らしていきたいって…
けれど、そんな夢はもう捨てた
現実を見てしまったから、体験してしまったから
わたしたちは、もう、
なにも知らなかったあの頃には、戻れない
水たまりに映る空
綺麗だと思った
ただ毎日がつらくて、苦しくて
泣きながら寝る夜が増えてきた
けれど、この水たまりに、
この世界のすべてが映っている
わたしが大嫌いな世界
わたしが生きている世界
わたしが生きなくてはいけない世界
光が反射して、キラキラと輝いている
不思議と、また明日も頑張ろうと思えた
一度、流してしまった涙は
止むことなく溢れていく
わたしの嗚咽も、止まることを知らない涙も
この雨の音と、わたしの傘で、
きっと誰にも知られることはない
これは、わたしと傘の秘密