【太陽】
朝8時の公園に向かう。手に持っているのは、さっきコンビニで買ったソーダ味のアイス。
休みの日の早起きは、なんだか特別なかんじがする。今日は特に予定もなくて、ただ気の向くままにブラブラと歩いていた。
公園には、意外にも誰もいなかった。朝が早いからか、夏の暑さが強まってきたからか。夏休み中なのに1人で歩き回っている私の方がおかしいのかもしれない。
藤棚のベンチに座る。ズボン越しにも、太陽のぬるさが伝わった。
少しの深呼吸、それと背伸び。アイスの袋を開ければ、アイスは既にちょっとだけ溶けていた。
慌ててそれを口に含む。身体が内側から冷えていく感覚がした。冷たい。けど、温かい。
太陽の光が、ジリジリと肌を焼く。あと5分もすれば、私の肌は真っ黒に焼き焦げているかもしれない。それもいいかもなと1人で笑う。
夏を、太陽を、私の身体いっぱいで味わう感覚。帰りは裸足で帰ろうか、さすがにお母さんに怒られちゃうかな。
「あ」
アイスの棒は、当たりだった。
【鐘の音】
陽の光が部屋に差し込むと同時に、鐘の音が街中に響く。凛としたその音は、身体中に染み渡るような気がした。
「おはよう」
声のした方を向く。君の姿を見かけて、思わず頬がゆるんだ。
「おはよう。昨日はよく眠れた?」
控えめに、君が頭を振る。
「残念だけど、あんまり。やっぱりまだ駄目みたい」
「そっか......」
君が、そっとベッドに腰かける。触れた手は冷たかった。
思わず君を抱きしめる。体温の低い身体。あの時の雨が、染み付いたみたいだ。
「大丈夫。ここなら絶対に大丈夫だからね」
「うん、ありがとう。君がいてくれてよかった」
「うん......私も。私も、君がいてくれてよかったよ」
大丈夫。絶対に君を守ってみせる。
鐘の音が聞こえた。耳に柔らかく入る音。
これからの私達を、祝福しているようだった。