◇1年間振り返り
三月に大学を卒業して、初めてひとり旅をしました。東京(近郊)に三泊四日、友人や親との旅行では行きづらい場所を存分に巡り、大満足。
特に、神保町で手に入れた明治大正期の地図や初版本は最高のお土産になりました!
四月には新社会人として働き始めましたが、度重なる十二時間勤務や休日出勤に耐えかね、九月に退職。今は完全週休二日制の甘い汁を啜って生きています。
給料も少し上がり、適当な就活は自分の首を絞めるのだと大反省でした。
二週間程度の無職期間の間に友人、母と旅行に行きました。伏見稲荷の千本鳥居、頂上まで行けるひと凄いな……、と。私は途中で足をつってしまい、リタイアしました。
今年の前半本当に何の記憶もないのでブラック企業はよくない。逃げ出せるうちにさっさと逃げ出すのが吉。
電子音の雪崩が鼓膜を破らんとする。繁華街のネオンを束にしたような彩度の明かりが目を焼く。隣の中年男が紙煙草を咥えた。貼り紙は「電子タバコのみ可」と呟いていたが、囂しい筐体らの喋り声に阻まれて、その姿はすっかり隠されていたのだった。
アドレナリン、セロトニン、そして興奮。その裏に蠢く焦燥感。今日は幾ら溶かしたのだったか。指先が痙攣するように震える。それでもなお、玉を捻り出す手を止めることはできなかった。
大学生。ひとはそれを人生の夏休みと呼ぶらしい。では、今のおれの姿は、人生の冬休みと呼ぶべきだろうか。岩のような雪が道を塞ぎ、真白い風が視界を覆うように、先が見えない。
ああ、やめよう、こんなことを考えるのは。
丁度、ビビットな赤文字が目に入った。おれは生唾を飲み込み、ハンドルを握る手に力を込めた。
『冬休み』
時は大正、帝都は本郷。
師走の寒空に並ぶ暖かなガス灯の明かりを見上げることもせず、群衆は皆つむじに目がついているみたいに顔を伏せ、足早に歩いていた。
しかし、一人、ただ一人だけ、調子の悪い懐中時計のような足取りで歩く男がいた。茫洋とした面持ちの彼は青年とも中年とも言いがたく、そしてその背丈を除けば男とも女とも言いがたい出で立ちをしていた。
呼吸の度、二酸化炭素混じりの淡い煙が口の端から零れる。それでも足を早めることはなかった。
男はかつて行きつけだったミルクホールを一瞥し、やがて赤門の前で足を止めた。昼餉時の鋭い陽光は鼠色の分厚い雲にその身を隠している。
ふと、今にも縺れて転げてしまいそうな様子の学生たちが男の瞳孔に溶ける。真新しいインバネスをひけらかすように大股で歩く学生らはすっかり隠れん坊をしている昼光より余程、眩しく、口惜しいくらいに儚い。
ここで待ち合わせようと、電報を送ったのは誰だったか。医者になったあいつか、それとも貴族院を継いだあいつか、男は口元に笑みを浮かべた。今にも口笛でも吹き鳴らしそうな様子だった。
『変わらないものはない』