塵屋敷

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 電子音の雪崩が鼓膜を破らんとする。繁華街のネオンを束にしたような彩度の明かりが目を焼く。隣の中年男が紙煙草を咥えた。貼り紙は「電子タバコのみ可」と呟いていたが、囂しい筐体らの喋り声に阻まれて、その姿はすっかり隠されていたのだった。
 アドレナリン、セロトニン、そして興奮。その裏に蠢く焦燥感。今日は幾ら溶かしたのだったか。指先が痙攣するように震える。それでもなお、玉を捻り出す手を止めることはできなかった。
 大学生。ひとはそれを人生の夏休みと呼ぶらしい。では、今のおれの姿は、人生の冬休みと呼ぶべきだろうか。岩のような雪が道を塞ぎ、真白い風が視界を覆うように、先が見えない。
 ああ、やめよう、こんなことを考えるのは。
 丁度、ビビットな赤文字が目に入った。おれは生唾を飲み込み、ハンドルを握る手に力を込めた。


『冬休み』

12/28/2022, 3:59:15 PM