春に咲く桜。あれはとても美しい。色も鮮やかな桃色、そして風が吹けば舞う花びら。散って地に落ちてもなおその鮮やかさは踏まれるまで色褪せることはない。
夏に咲くあさがお。あれもとても美しい。梅雨にも負けず力強く咲き、さまざまな色を私たちに見せてくれる。私もあの力強さを見習いたいものだ。
秋に咲くイチョウ。あれもとても美しい。黄色に染められたあの葉は木についていても、地に落ちてもなおイチョウの存在感は変わらない。道路際に落ちた葉を眺めるのもいい。
冬は見えないところで春に備えている木や植物が美しい。厳しい冬の寒さに耐え、春に綺麗な花を咲かせたり、葉がのびのびと成長する。
忙しい毎日にひとつの美しさを見出すことで一つ得をした気分になる。貴方も明日なにか美しいと思うものを身の回りで探してみてはいかがでしょうか?
「美しい」
これは私の実体験である。
数年ほど前に北海道でブラックアウトという大規模停電が起こった。もちろん電気は使えない。私の家はオール電化だったが、家庭用コンロがあったのでなんとかなった。ご飯は乾麺やカップラーメンがあったのでなんとかなった。でもスマホも充電出来ないので暇つぶしに使うことができない。緊急の時のために充電を残しておかなければいけないからだ。そうなると時間が余ってしまう。昼はラジオを流しながら本を読むことができた。でも夕暮れが近づいてくると暗くなってくる。私は本を読むのをやめ、気分転換に外に出ることにした。外に出て空を見上げてみると、今までに見たことがないほど綺麗な星々、天の川がこんなにはっきり見えるなんて今までなかった。どこの家庭も電気が使えないため星と月以外の灯りは一切なく空が透きとおっていた。この時私は初めてこの世界に生まれて来てよかったと思った。
「この世界は」
あぁ。どうすればよかっただろうか。
それが今もわからない。
それは数年前のこと。友人に相談を受けた。なぜ人間は生きているのかという相談だった。そんなこと私にもわからない。だが相談を受けたからには何か答えようと思った。だからなぜ自分は生きているのかを答えることにした。私は毎日ご飯を食べるために生きている。どんなに辛いことがあってもご飯を食べることに幸せを感じる。ほんとに辛い時や何かを頑張った時にはご褒美に少しいい物を食べる。それを生きがいにしていると彼に伝えた。
彼は少し辛そうな顔を見せたあとニコッと笑い、
「○○らしいな」と言い、感謝を伝えたあと私のもとを離れた。それから彼から相談も連絡も来ることがなかった。2年ほど経っただろうか、彼から連絡が来た。なにかあったのかと思ったら、彼から話したいことがあるとのことだった。週末に会う約束をした。
週末、私の家の近くのカフェで話すことになった。前に会った時あまりにも違う彼の格好に私は目を丸くさせた。前はふくよかな身体で顔もまるまるとしていた。なのに今はと言うと身体はやせ細り今にも折れてしまいそうなほど痩せ、やつれていた。
「随分痩せたようだけど大丈夫か?」
と私は声をかけたが聞こえていなかったのか反応はなかった。突然連絡を寄越してどうしたのかと言おうとした途端彼が口を開いた。
「この健康食品を買わないか?毎日2食これを食べるだけで理想の体重まで一直線だぞ!」
どういうことだ?彼はなんでこの栄養バランスが取れていなそうな固形の食べ物を勧めてくるのだろうか。
だが私の返事はもう決まっている。
「悪いけど私は普通の食事を楽しみたいんだ。健康になるために食事をしているわけじゃない。というかこの食品を毎日食べているのか?」
どこにでもありそうな固形の食べ物。こんなものを毎日食べるなんて私にはできない。彼は
「あぁ。当たり前じゃないか。これのお陰で俺のコンプレックスだった身体も痩せ周りからデブなんて言われなくなったよ。○○もそろそろ健康を気にする歳なんじゃないか?」
どうして。前の彼ならこんなこと言わなかった。いつからこうなってしまったのだろう。私と話したあとの2年間で何があったのだろうか。そう考えていると彼が
「別に食わなくていい。買ってくれないか?ノルマがあるんだ。まとめて買ってくれたら友人割引もする。なぁ○○、俺ら友達だろ?買ってくれよ。」
私はここで理解した。彼はもう前の彼じゃないと。あの優しい彼がなぜこうなってしまったのだろう。私に相談したときなにか辛いことがあったのだろうか。いや考えるのはあとにしよう。まずは先に彼のもとから離れることにした。
「すまん。君のその食品は買うことはできない。それと職場の方から呼び出しが来たからここで失礼する。お金は置いておくから支払いは君の方でしてくれないか?おつりはそのまま貰っても構わない。じゃあ、これで」
そう言い3000円を置いて私はカフェから逃げるように去った。コーヒーしか頼んでないためそんなにするわけがない。でも彼の痩せた姿が見てられなかったのだ。縁を切るつもりだが少しでもちゃんとしたものを食べてほしい。そういうつもりも込めて3000円を置いた。
家に帰り、頭を整理することにした。相談されたときにもうちょっと彼のことを気にしていたら変わっていたのだろうか。こっちから彼に連絡をしていればもっと早く気づいたのだろうか。たらればなんて意味が無いことはわかっている。でもなにか出来たのではないか。そういう思いがずっと頭の中をかけまわっている。あぁ、どうして。そう思いながら彼の連絡先をそっと消した。
「どうして」
とても幸せな夢を見ていた。
そんな気がする朝の目覚め。楽しそうに笑う彼女の顔、寂しそうに私と別れる彼女の顔。時には百面相をする彼女。もう会えないのに、会うはずもないのに。
これはそんなありきたりなよくある話。
彼女が死に別れしたわけでも行方不明になったわけでもない。ただ別れただけだ。
でも私が心から愛していた人の話。
最初は友達だったが恋愛感情が芽生え恋人関係になった。初めて付き合ったときは私も彼女も幼く、恋愛とは、恋人とはどうなのかよく分かっていなかったのだろう。数ヶ月して別れた。
1年ほど経っただろうか。また彼女と再会した。再会した当初は気まずい空気だったが趣味が同じということでまた友達になった。
何故だろうか。人間というものは、いや私というものはまた同じことを繰り返す。彼女のことを好きになってしまったのだ。そして彼女も私のことを好いてくれた。
それから彼女と色々なことをした。手を繋いだり、デートをしたり、キスをしたりとたくさんのことをした。1年と少し経ったある時、彼女からの連絡が少なくなってきた。返信もそっけないものになっていった。
あぁ、そろそろ振られるのかな。そう思っていた数日後彼女から話があると言われた。別れたくない、まだ一緒にいたい。でも彼女の迷惑にはなりたくない。そんな気持ちが整理出来ないまま彼女の話を聞いた。
友達としての好きか恋人としての好きかがわからないそうだ。そんな気持ちで私と付き合ってるのが申し訳ない。だから別れたい。
そんな内容だった。わかったと答えた。私のわがままを言って迷惑をかけるのが嫌だった。そんな理由で自分の本心を伝えないまま彼女との交際を終えた。
それから2ヶ月か3ヶ月経っただろうか。彼女のことをたまに思い出す。私が生きてきた中で誰よりも好きになった彼女。誰よりも大切にした人。
今でも彼女との幸せな夢をたまに見る。
「夢を見ていたい」
こんな話を最後まで見てくれた貴方に一つだけ伝えたい。今、大切な人がいる人。これから大切な人ができるかもしれない人。もし別れ話や離れることになったとき、ちゃんと今自分が思っていること。それを伝えて欲しい。私みたいに後悔して欲しくないからだ。
それが恥ずかしかったり、プライドが許さなくても絶対に言って欲しい。結果別れることになっても言えてよかった。そう思える日が必ず来るから。
今日もいつもと変わらず学校に行き授業を受けた。
帰りは電車に揺られ音楽を聴く。家に帰る前に明日の朝ごはんのパンを買いに行く。今日は金曜日だ。土日の分を買う。家に着いたら洗濯、掃除を終わらせる。
これが終わればあとはもう自由だ。私は一人暮らしをしている。だから自分のことはしっかり自分でしなければならない。まぁ高校生にもなって自分のことが出来なければ一人暮らしを許して貰えなかっただろう。
終わったら仲のいいネットのお友達と電話をする。暇になった人達が後々入ってくるだろう。そのあとはゲームしたり、ご飯食べたり、シャワーも浴びた。このあとは深夜1時前には寝るだけだ。
明日は特に予定がないがちゃんと寝る習慣をつけるのは大事だ。こんな特に代わり映えの無い1日だが私は生きてて幸せだ。こんな毎日が続けばいいのに。そう思いながらまた1日が終わる。
また明日も楽しめたらいいな。
「ずっとこのまま」