ホワイトアウト寸前の吹雪の中。
ようやく辿り着いた藁葺の古民家の引き戸を薄く開ければ、袂に包まれてヌクヌクとしていた黒猫が「お前はもう用済みだ」とばかりに私の腕の中から抜け出して、軽快な足取りで戸の内へと入っていった。
薄情なヤツだな、ため息一つ吐いて再び引き戸に手を伸ばせば、ガララッと音を立てて引き戸が全開になる。
「こんな日に当たるなんて、災難だったな」
ホラ早く入れ、と綿入れを羽織った君がニカッと笑った。
最近では、ヒートショックという危険なモノが流行っているそうで。
「足先とか手とか、末端から掛け湯するんだぞー」
と、浴室と脱衣所を隔てる薄い摺り硝子越しに声をかけられた。
「はいはい、わかりましたよ」
そう言って、手桶になみなみ入った湯をザバッと豪快に肩にかけると、君の忠告を無視して湯船に飛び込んだ。
テーマ「冬は一緒に」
クリスマスプレゼント、親が貰って喜ぶ物とは何だろうか?
服とかは趣味が合わないし、欲しそうにしていた楽器は場所を取る。
この間の健康診断で、糖分塩分油分を控えろと医者に言われたので、お菓子や肉類は駄目。
トンカツとか酢豚とか食べたがるけど、鶏胸肉の素焼きで我慢してもらってる。
商品券とか現ナマは自分の為にとっておきなさい、と言われるだろうし。
花の好みも真逆、そしてペットがイタズラするから置けない。
う〜ん。
――タラバガニ、か?
いや、でも、枕元にタラバガニは、ちょっと……。
いや、まてよ。
足元ならイケるか?
テーマ「とりとめもない話」
腹は膨れない。
病気は治らない。
寒さは凌げない。
役に立たない愛よりも、金が欲しい。
そう願うのは可笑しなこと?
テーマ「愛を注いで」
何か重たい物を下ろす音と共に「ただいまぁ」と君の声がした。
それっきり、リビングに来る気配がない。
なんだ?
キッチン横の洗面所の引き戸から廊下へと顔を出せば、見知らぬ大きな段ボール箱にだらりと凭れている君。
今度は何を持って帰ってきたんだ?
重そうな段ボール箱をズリリ……、と押しながら目の前までやって来た君に問えば、何時ものへにゃへにゃな笑顔が返ってきた。
勤めている店のクリスマスツリーを新調したとかで、今までお店で使っていた方を貰って帰ってきたそうだ。
これで我が家の質素なクリスマスが一気に華やかにゴージャスになるよ!
なんて君がウキウキしながら早速リビングで、バラバラになっているツリーの白い骨組みを繋げていく。
「新しいのは幹のとこまでホワホワァ〜って光るんだよ!それがすっごく幻想的でね綺麗!」
ふふふ、と思い出し笑いをしながら組み上がった真っ白なツリーを「よいしょっ」と立たせれば。
「星、つけられないな」
「うそっ!?」
天辺の一枝が僅かに天井に触れていた。
テーマ「部屋の片隅で」
なんてタイムリーなお題。
今まさに風邪引いてるよ。
鼻水と喉痛、軽いめまい。
夕方から関節が痛みだして、咳もたまに出るようになった。
薬が切れてこの時間に目が覚めたのか、神経が切り替わる時間帯だから息苦しくて目が覚めたのか。
よくわからないが、市販薬で治っておくれ。
この『微妙』な時期に、病院には行きたくないの。
テーマ「微熱」